平成5年6月29日(火)~10月3日(日)
中国の影絵芝居
中国では河北(かほく)省や陜西(せんせい)省、そして台湾において影絵芝居が伝えられています。影絵芝居のことを大陸では皮影戯(ピーインシー)、台湾では皮猴戯(ピーカウシー)と称し、孫悟空(そんごくう)や楊貴妃(ようきひ)にまつわる劇が演じられます。明・清時代に製作された人形は皮が厚くスクリーンには黒い影しか映りませんが、現在のものは鮮やかに人形の色が映し出されます。皮は牛皮を用います。
ワヤン・シャム(マレーシア) |
マレーシアの影絵芝居
マレーシアの影絵人形はワヤン・シャムと呼ばれています。シャムと言われるのは、影絵が伝えられているのがタイ国境に近いケランタン地方であるためです。人形の形態にもタイの様式が見られ、ケチョポンという先の尖(とが)った冠を着しています。材料は雌牛か水牛の皮で、柔かくなるまで磨かれ彩色されます。スクリーンには人形の彩色が映し出されます。
ワヤン・クリ(インドネシア) |
インドネシアの影絵芝居
インドネシアの影絵芝居はワヤン・クリと呼ばれます。ワヤンはマライ語のバヤンの訛(なま)った語で「影」を意味し、クリは「皮」という意味です。ワヤン劇は本来、魔除(まよ)けとして演じられていましたが後に芸能化・娯楽化し、今では結婚式などにも演じられています。
影絵人形の皮は厚手で、彩色は施されていますがスクリーンには黒い影しか映りません。観客はスクリーンの周囲から見ますので、演じる側から見る場合は人形の彩色を楽しむことができます。
インド・ケララ州の影絵芝居 |
インドの影絵芝居
インドの影絵芝居は南部が盛んで、アーンドラ・プラデーシュ、タミール・ナドゥ、ケララの各州で行われます。なかでも、アーンドラ・プラデーシュ州の影絵芝居はトール・ボンマラータと呼ばれ、現存する世界中の影絵人形のなかでは最大のものです。その人形は鹿皮製で薄く、そのために彩色がスクリーンを通して映し出されて、色の美しい影絵になっています。
ケララ州のは、トール・パーヴァ・クートゥと呼ばれ、皮は厚手のためスクリーンにはその黒い影だけが映し出されます。なお、この影絵芝居は9月23日(祝日)に本館で行う予定です。
カタプトリ(インド) |
木製人形芝居
日本の木製操(あやつ)り人形は平安期の傀儡(くぐつ)が後世に発展したもので、その名残りは豊前地方に伝わる傀儡子舞(くぐつまい)に見ることができます。近世後期には大阪で文楽が行われ、以後各地に広まりました。
中国でも劇用の人形のことを傀儡と記し、指人形や糸操り人形などがあります。棒使いの人形は陜西省などごく一部の地域にあり、今回展示しています。
インドネシアの西部ジャワ地方にはワヤン・ゴレという棒使いの人形があり、インド北西部ラジャスターン地方にはカタプトリという糸操りの木製人形が伝えられています。
(協力者)
中村隆暢、英子・A ・クスマ、宮尾慈良
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、(財)現代人形劇センター、(中国)陜西歴史博物館