平成6年2月1日(火)~4月3日(日)
妙法院像(部分) |
「江戸時代のくらしと調度」について
江戸時代の人々は、日常の生活にどのような調度を使っていたのでしょうか。
現在私達の生活になじみの深い、室内に畳(たたみ)を敷きつめ、障子(しょうじ)、襖(ふすま)等を用いた日本古来の建築様式(けんちくようしき)を書院造(しょいんづく)りといいますが、江戸時代には、この書院造りにふさわしい調度がつくられました。
今も私達は、3月3日の上巳(じょうし)の節句(雛祭(ひなまつ)り)に、雛人形と共に飾られる雛道具から、かつての時代の調度の品々をみることができます。特に化粧(けしょう)道具、飲食(いんしょく)の道具等は、私的な生活(奥の生活)で使われることから「奥道具(おくどうぐ)」といわれていました。
又、これらの調度の中には香箱(こうばこ)、茶入(ちゃいれ)等も見られ、このような香道(こうどう)、茶道(さどう)や古典文芸(こてんぶんげい)等をたしなんでいた当時の人々の生活がしのばれます。
ここでは、本館に残る武家が使用した奥道具を中心に、彼らが育(はぐく)んできた文化についてもあわせてみてみたいと思います。
用語解説
衣桁(いこう)
着物等をかけておく、鳥居(とりい)型をした家具。
刀架(とうか)
刀を横にして掛ける刀掛けのこと。普通大小の刀が掛けられるよう二段になっている。
定紋入蒔絵鏡台 |
鏡台(きょうだい)
鏡をとりつけるための台。台には白粉入(おしろいいれ)、刷毛(はけ)、櫛(くし)等の化粧(けしょう)道具を入れるための引出しがある。
挟箱(はさみばこ)
外出の際に必要な衣類(いるい)、調度(ちょうど)、装身具(そうしんぐ)等を納めて従者(じゅうしゃ)に担がせる箱。江戸時代の武家の旅行用具の一つ。
重箱(じゅうばこ)
料理を種類別に盛るための重ね容器。主に正月や物見遊山(ものみゆさん)の際に使われる。
懸盤(かけばん)
饗応(きょうおう)に用いる膳(ぜん)の一種で、古くは四本足の台の上に四方に縁をつけた角盆をのせ懸けてはめこんだものを懸盤という。
茶入(ちゃいれ)
茶道具の一つで、茶(ちゃ)抹を入れる器のこと。別名濃茶器(こいちゃき)という。
波千鳥文蒔絵十種香箱(福岡市美術館蔵) |
香箱(こうばこ)
香木(こうぼく)(香気の高い木) を切ったり薫(た)いたりする香道(こうどう)のための十種の道具を入れるもの。
文箱(ふばこ)
書状を入れて運び届けるのに使う箱。
貝桶(かいおけ)
江戸時代の婚礼(こんれい)調度の一つで、桶の中の貝(蛤)は、一対の合わせしかできないため、婦人の貞節(ていせつ)の象徴(しょうちょう)とされた。
脇息(きょうそく)
座った時、身体の前や脇(わき)に置き、肘(ひじ)をのせて、身をもたれさせるための道具。