平成6年9月27日(火)~平成7年3月26日(日)
1 木造如来立像 |
部門別展示室3では彫刻や工芸品をガラスケースに入れず、直接見ることができるように展示しています。今回は福岡市とその近郊に残る多くの文化財のうち仏像を中心にして展示しました。とりわけ、糸島郡二丈町(にじょうまち)の浮獄神社(うきだけじんじゃ)の木造如来立像は九州で最も古い木彫像として知られています。また、西区・飯盛神社(いいもりじんじゃ)の石造狛犬や東区・志賀海神社(しかうみじんじゃ)の鍍金鐘(ときんしょう)などは大陸に近い福岡の地ならではの、外国文化の影響を考える上で興味深い遺品です。
この機会に、普段は寺院や神社に安置されている文化財に身近に接してみてはいかがでしょうか。
1 木造如来立像(もくぞうにょらいりゅうぞう) 1躯
重要文化財/二丈町・浮嶽神社/像高 180.2
現在、螺髪(らはつ)と両肘から先は失われていますが、頭頂から台座までカヤの一材から彫り出したものです。明確で厳しい表情、胸や大腿部などの奥行きのある堂々とした体つき、重々しく垂れる衣など、各部に平安時代初期に特有の力強さがあらわれています。浮嶽神社には他にも制作が平安時代初期にさかのぼる木造仏坐像と木造地蔵菩薩像の2躯があり、これらの仏像は九州の古い仏教文化を知る上でも極めて重要です。
2 木造聖観音坐像(もくぞうしょうかんのんざぞう) 1躯
重要文化財/城南区・油山観音正覚寺/像高 79.2
観音には、衆生(しゅじょう)(私たち)の救いを求める声を聞き、あらゆる手段で救いの手を差し延べる功徳(くどく)があるとされています。本像はヒノキ材の寄木造(よせぎづくり)で、頭に高い髻(もとどり)を結い上げ、左手に蓮華を持ち結跏趺坐(けっかふざ)する姿であらわされています。伏し目がちの目や小さくまとめられた口もとなど端整で優美な表情ながら、やや強調された胸や腹の起伏、腕や脚部のうねりまとわりつくような衣の表現は、その制作が室町時代以降であることを思わせます。
3 木造如来形残欠(もくぞうにょらいぎょうざんけつ) 1躯
福岡県指定文化財/個人蔵/総高(現状)51.1
現在、体の上半身前面しか残っていませんが、下部に残る膝前材との連結部から当初は坐像であったことがわかります。満月を思わせるような丸くふくよかな顔、穏やかな表情、起伏のなだらかな肉身の表現、浅く流れるような衣の皺(しわ)など、いずれも平安時代後期の彫刻の特徴を示すものです。当時の人々はこのような優しく美しい像を求めその信仰を託したのでしょう。像の内部は干割(ひわ)れを防ぐため、きれいにくりぬかれています。
4 木造仁王像残欠 |
4 木造仁王像残欠(もくぞうにおうぞうざんけつ) 1対
須恵町指定有形文化財/須恵町/総高(阿形)31.0 (吽形)32.0
頭部のみの残欠ながら、その表情をよくうかがうことができます。いずれも憤怒(ふんぬ)の表情であらわされ、寺域に侵入しようとする外敵を防ぐ仁王像のものであったことがわかります。阿形像(あぎょうぞう)は口に歯をあらわして下方を睨み、吽形像(うんぎょうぞう)は口をへの字に曲げ正面を見据えています。激しい表情ですが、その彫り口は洗練されたもので、一流の仏師の手によったものでしょう。本像は中世以前に若杉山の山麓で栄えた建正寺のもので、制作は平安時代の末頃と思われます。