平成7年7月18日(火)~10月22日(日)
袱紗 |
2、共感する
儀礼は、決まったかたちを繰り返すことに意味がある。それにより、儀礼に参加した人々は、説明されるまでもなく行事の意味を理解し共感することができる。人生の儀礼で使われる熨斗(のし)や袱紗(ふくさ)などは、色や模様を見ただけで、その意味が相手に直接伝わり、答礼のかたちの準備を促す働きをしているといえよう。宮座の供物も、かたちがそのまま豊作を願う人々の思いを伝える意味をもっている。さらに、人々がその供物を直会(なおらい)で会食することにより、ますます共感は広がり、伝えた事柄はやがては人々へと戻って来ることになるのである。
宮詣着物(背守の部分) |
3、背中は何も言わないけれど
人の背中は、何かを伝えることが乏しい部位とされる。それは背中が身振りや言葉を自由に使えないからである。伝えないという意味から、仲の悪いことを「背中同士」と呼んだりもしてきた。しかし、「子は親の背中を見て育つ」といわれるように、言語や身振りを超えた情報が背中を通して伝え合われているともいえ、赤子の着物や漁師のドンザの背中には、伝え合いのための刺子模様や装飾が施されてきた。
小絵馬 |
小絵馬(乳しぼり) |
4、匿名(とくめい)は本音を語る
他人に知られたくないことや秘かな思いを伝える場合には、本名を伏せた匿名が用いられる。病気平癒や禁煙など様々な祈願を象徴的に描いた図像を通して、匿名で神仏に伝える小絵馬はその代表である。匿名の祈願者は他人に知られることなく、しかも効果的に神仏からの恩恵を受けることになる。また、その図像を見る他の匿名の祈願者にも共感と安心感が広がっていく。ここに、象徴を通しての伝え合いがある。小絵馬の図像は祈願の種類に応じて色々なかたちが考案されてきた。
※協力者(順不同、敬称略)
生田清四郎・柴田要之助
中村伊右衛門・石橋雅義・守谷末人
岡田 一・太田善之祐・江頭 光
斎藤忠夫・野間フキ・玉川 桂
南区民俗文化財保存会