平成7年9月26日(火)~平成8年3月24日(日)
4 木造不動明王立像及脇侍像 |
5 木造阿難立尊者立像 |
6 銅造菩薩形坐像 |
4 福岡県指定文化財 木造阿難尊者立像(もくぞうあなんそんじゃりゅうぞう)
1躯/糸島郡二丈町波呂 龍国寺(りゅうこくじ)/ヒノキ材/像高 46.2センチ
阿難は釈迦の十大弟子の1人で、釈迦の説法を最も多く聴いたことから仏教では「多聞第一(たもんだいいち)」として称して尊ばれています。一般に像としては釈迦の脇侍として若い僧侶の姿にあらわされることが多く、本像の表情も張りのある若々しい表情に刻まれ、わずかに首をかしげた姿勢は釈迦の話を熱心に聴こうとする青年僧のようです。なお、像内に銘文(めいぶん)があり、南北朝時代の至徳元年(1384)の制作であることがわかります。
5 木造不動明王立像及脇侍像(もくぞうふどうみょうおうりゅうぞう)及脇侍像(きょうじぞう)
3躯/前原市雷山 大悲王院(だいひおういん)/材質不明/像高 98.5センチ
不動明王は、容易に仏法に従わない者を教化するために大日如来(だいにちにょらい)が姿を変えたもので、矜(こん)が羅(ら)、制(せい)た迦(か)の両童子はその働きを助けると言われます。本像は平安時代後期の制作と思われ、両脚に刻まれたさざ波のような丸く穏やかな衣の皺(しわ)に、この時代の彫刻の特徴を見ることができます。本像を伝える大悲玉院は、怡土郡七ケ寺の1つ、雷山千如寺(らいざんせんにょじ)の伝統を引き継いでおり、今も仏像をはじめ多くの優れた文化財を守り伝えています。
6 木造天部形立像(もくぞうてんぶぎょうりゅうぞう)
1躯/前原市長野 玉榮寺大日堂(ぎょくえいじだいにちどう)/ヒノキ材 一木造/像高 99.5センチ
左肘を曲げ、何かをささげるような格好をしていることから、本来は左手に宝塔(ほうとう)を載せ右手に矛(ほこ)をもった毘沙門天像(びしゃもんてんぞう)であったのでしょう。制作は平安時代後期と思われ、穏やかなものを好んだ時代に相応しく、本来は激しい怒りをあらわす武神像でありながら、動きの少ない穏やかな姿に表現されています。甲冑(かっちゅう)が簡素であることなど、全体に素朴な印象があることから、この地で造られたと思われます。
7 銅造菩薩形坐像(どうぞうぼさつぎょうざぞう)
1躯/個人蔵(福岡市博物館寄託) /銅造/像高 74.4センチ
二丈町の二丈岳の麓には、かつて怡土郡七ケ寺の1つ、一貴山夷嶷寺(いきさんいきじ)があり、現在も一貴山の地名とともに仁王門(におうもん)が残されています。本像はこの夷嶷寺の旧仏で、目鼻が顔の中央に寄った独特の表情や、着衣の形式などから、朝鮮半島で高麗(こうらい)時代(936~1392年)に造られたと思われます。いつ頃日本にもたらされたかは分かりませんが、糸島地方が大陸と近い関係にあったことを物語る資料と言えるでしょう。なお、長崎県壱岐の金谷寺(きんこくじ)には、この像と対になるそっくりの像が伝わっています。
本展の開催にあたりまして、浮嶽神社、西林寺、大悲王院、大法寺、龍国寺ほか御所蔵者、管理者の方々に御配慮賜りました。記して感謝申し上げます。
※なお、2・木造阿弥陀如来坐像は10月18日からの展示です。