アーカイブズ

No.106

歴史展示室

情念の浮世絵師 月岡芳年

平成9年2月11日(火)~4月6日(日)

「一魁随筆(いっかいずひつ)」22・58・59

 明治5年(1872)刊行。13図。全体が戯画風にまとめられており、怪異とユーモアが融合した独特の世界を形作っている。芳年の自信作であり、彫り、摺りともに充実した傑作ぞろいであるが、発表当時は不評だったらしく、刊行も途中で断念したらしい。晩年の弟子が芳年の落胆ぶりを証言している。

「郵便報知新聞(ゆうびんほうちしんぶん)」13・14・47・48

 明治7年(1874)から翌々年にかけて刊行。当時このような錦絵新聞が飛ぶように売れた。ショッキングな事件をあつかうものが多く、維新の動乱で揺れ動く人心をとらえたのであろう。浮世絵がもつ速写性、報道性が新しいジャンルを開拓させたというべきである。

「見立多似盡(みたてたいづくし)」20

 明治10年代に刊行。各図の題名に「かねが見たい」「いつぷくのみたい」「おしてもらいたい」などと「たい」がつく。明治時代の女官や女房、娘、芸者などを様々なシチュエーションでとらえる。当時の女性気質や風俗を知る上でも興味深いシリーズ。

「新柳二十四時(しんりゅうにじゅうよとき)」21・54

 明治13年(1880)刊行。新橋や柳橋の芸者たちの日常をそれぞれ1日の時刻になぞらえて描いたシリーズ。それぞれに現実のモデルが存在するようで、華やかな職業の背後に隠れた現実世界も垣間みえる。

51 東京開化狂画名所 千束の酉の町・日暮里布袋
51 東京開化狂画名所 千束の酉の町・日暮里布袋

「東京自慢十二ヶ月(とうきょうじまんじゅうにかげつ)」19・55

 明治13年(1880)刊行。東京自慢とはいっても名所ではなく当時彼の地で有名だった美人を取り上げたシリーズ。いわば東京美人の自慢である。各季節、月の花々と風景を背景に、新しい時代の美を代表する女性たちを競わせている。明治13年は女性を描いた年と位置づけられる。

「東京開化狂画名所(とうきょうかいかきょうがめいしょ)」16・17・51・52

 明治14年(1881)刊行。新しい都東京の名所を背景に、当時の人々の風俗をおもしろおかしく描いたシリーズ。現在40図が知られている。名所絵と戯画を合わせた趣向で、社会派の漫画的な傾向をもっている。

「皇国二十四功(こうこくにじゅうしこう)」50

 明治14年(1881)に刊行された歴史画の揃物。古今にわたって功をなした人物を取り上げ、各国に戯作者(げさくしゃ)3代柳亭種彦(りゅうていたねひこ)の解説がつく。人物像とその行状の捉え方に芳年独特の解釈が加えられている作品もある。

「芳年武者旡類(よしとしむしゃぶるい)」53

 明治16年(1883)刊行。32図からなる。武者旡類とは武者ぶるいとのことであるが、武者絵ではなく神話などにも題材を求めたもので、日本の歴史的な英雄を集めたシリーズ。晩年の、筆致をいかした表現が印象深い。

「新撰東錦絵(しんせんあずまにしきえ)」25・26

 明治18年(1885) から19年(1886)にかけて刊行された全23図の揃物。巷説(こうせつ)、巷談(こうだん)の類を描き、非常な人気を得たシリーズ。これに含まれる作品を日本画壇の大御所である狩野芳崖(かのうほうがい)が賞賛したと伝えられている。理知的な構図が光る秀作が多く含まれた芳年代表作のひとつ。

33 新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図
33 新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図

「月百姿(つきひゃくすがた)」23・24・56・57

 明治18年(1885)から24年(1891)にかけて刊行された100枚の揃物。歴史や伝説、謡曲(ようきょく)などから取材し、月をあしらった様々な図様を試みる。狩野派的な肥痩のある筆法を用いたり、浮世絵の定型的な表現から逸脱したものも含まれている。芳年の技法の幅が伺える代表作のひとつ。

「風俗三十二相(ふうぞくさんじゅうにそう)」27・28・61・62

 明治21年(1888)刊行。芳年の美人画における代表作。各時代の各階層の様々な女性たちの姿態を描く。単なる美人画ではなく、人物の内面まで、しかも表現の裏にある彼女たちの人生までも見るものに想像させる趣向をもつ。近代的な肖像画としても価値がある。ここに芳年の系譜に連なる鏑木清方(かぶらぎきよかた)や伊東深水(いとうしんすい)らの先駆者としての姿がみえる。

「新形三十六怪撰(しんけいさんじゅうろっかいせん)」29~33・63~67

 明治22等(1889)から没年の明治25年まで刊行され、最後は没後に弟子の助筆によって完結をみた遺作。36枚からなる。「和漢百物語」から出発した芳年の怪奇画の集大成であり、簡潔な構図と計算されつくした色彩構成に洗練された様式美が感じられる。歌舞伎、浄瑠璃、謡曲、伝説、民話、史譚と題材も幅広い。

学芸員 中山喜一朗

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