平成10年8月25日(火)~10月25日(日)
昭和時代前期
昭和初期に流行した鳥瞰図は、観光用のガイドブックとして用いられたようです。福岡・博多を描いたものも何種類もあり、観光目的で福岡を訪れる人がたくさんいたことが分かりますが、昭和に入ると絵はがきの数自体は少なくなります。どうやら絵はがきブームが下火になったためのようです。この時期の絵はがきをみると、大正時代に比べて、洋風建築を被写体にしたものが少ないことに気づきます。これは、洋風建築がさほど目新しくはなくなったということかもしれません。
かわって絵はがきになったのは、1924(大正13)年に完成した水上公園や27(昭和2)年の東亜勧業博覧会の跡地を整備して30(昭和5)年に完成した大濠公園などです。
また、昭和10年代に入ると出版物に対する統制が厳しくなり、絵はがきの発行も事前に軍の検閲をうけるようになりました。
昭和前期の福岡・博多の鳥瞰図 |
昭和初期の水上公園附近 |
昭和初期の大濠公園 |
現在の福岡・博多名所
現在販売されている福博の絵はがきには、かつて定番だった筥崎八幡宮や東公園、西公園などはあまりないようです。福岡ドームやタワー、ベイサイドプレイス博多埠頭、キャナルシティ、海の中道海浜公園など、この20年間くらいで整備された街並みの写真がよく使われています。大濠公園のように70年近く絵はがきになっている名所もありますが、大半は最近美しく整備された景観です。
現在の福博名所絵はがきに占める新しい景観の多さは、明治時代後期から大正時代の絵はがきに似ています。これは、福岡という街が、今もその景観を変えつづけていることを示します。特別有名な定番の名所がないゆえに、福博名所絵はがきは、それぞれの時代の福岡・博多の街をはっきりと映し出しているということができるのです。
(太田暁子)
福岡・博多の写真集
波多江五兵衛・石橋源一郎編『想い出アルバム「博多、あの頃」』葦書房/波多江五兵衛・石橋源一郎編著『ふるさとの思い出 写真集 明治・大正・昭和博多』図書刊行会/『福岡市市制100周年記念 写真集 ふるさと100年』福岡市/父の写真集をつくる会編『大崎周水写真集・104冊のアルバムから』葦書房/『FUKUOKA SCENE A Multi‐Faceted City of Fascination』福岡市