平成10年9月29日(火)~平成11年3月28日(日)
仏像はいろいろな姿をしています。立っている仏像、すわっている仏像、優しい顔をした仏像、怖い顔をした仏像…。どうしてこのように違った姿をしているのでしょうか。
じつは仏像にはそれぞれの役割と名前が決められています。仏像の姿が少しづつ違うのも、その仏(ほとけ)がどんな役割をもっているのか、ひと目でわかるようにされているからなのです。
さて、この展示では福岡市とその周辺に残る貴重な仏像を、『如来(にょらい)』・『菩薩(ぼさつ)』・『祖師(そし)』・『天部(てんぶ)』の4つの種類に分けてご紹介します。どんな特徴があるのか、じっくり観察してみましょう。
悟(さと)りの境地(きょうち)に到達…如来(にょらい)
如来は長い修行の末、悟(さと)りをひらいたほとけです。釈迦(しゃか)如来のほか、阿弥陀(あみだ)如来や薬師(やくし)如来、大日(だいにち)如来など多くの種類があります。ふつう1枚の布をまとっただけの簡素な姿をしています。また頭には螺髪(らほつ)と呼ばれる縮(ちぢ)れた髪、肉髻(にくけい)というコブのような盛り上がりがあり、一般の人間とは違った体の特長をもっています。ただし大日如来だけは例外で、冠(かんむり)や腕輪といった豪華な飾りをつけています。
(1)木造如来坐像 |
(1) 木造如来坐像(もくぞうにょらいざぞう)
鞍手郡宮田町 谷組合 (像高)84.0 センチ 平安時代後期(12世紀) 1躯
眼が大きく個性的な顔立ちの如来像です。両手は最近の修理で復元され、右手は怖(おそ)れを取り除き(=施無畏(せむい))、左手は願いを聞き届ける(=与願(よがん))という意味をあらわしています。如来像は主に手のかたち(=印相(いんぞう))で種類を見分けますが、この像は釈迦(しゃか)如来の印相をしています。【福岡県指定文化財】
(2)木造薬師如来坐像 |
(2) 木造薬師如来坐像(もくぞうやくしにょらいざぞう)
糟屋郡須恵町 新原地蔵堂 (像高)85.5センチ 平安時代後期(12世紀) 1躯
薬師(やくし)如来は東方の浄瑠璃世界(じょうるりせかい)に住む、あらゆる病気を治す如来です。ふつうは左手に薬壺(やくこ)を持ち、十二神将(じんしょう)という12人の家来を従えていることもあります。この像のようにどっしりと落ち着いた姿は、病気の不安におびえた昔の人々にとって、大きな心の拠(よ)り所になったことでしょう。
(3) 木造阿弥陀如来立像(もくぞうあみだにょらいりゅうぞう)
(3)木造阿弥陀如来立像 |
仏像の各部名称 |
(図1)如来(にょらい)(阿弥陀如来像(あみだにょらいぞう)) |
糟屋郡須恵町 新原地蔵堂 (像高)97.1センチ 平安時代中期(10世紀) 1躯
阿弥陀如来は生前善(よ)いおこないをした人を西方極楽浄土(さいほうごくらくじょうど)に導く如来です。この像のように左右の手で親指・人差し指の輪をつくるのは死者を極楽へ迎えに来る姿(=来迎(らいごう))をあらわしています。また、座禅(ざぜん)のように両手を膝(ひざ)の上で組んでいる姿(図1)もあります。