平成11年3月30日(火)~平成11年8月1日(日)
▼中国・朝鮮半島の仏教美術
現在残っている中国の仏像の多くは石や金属で作られています。これは材料として金属や石が好まれたためと考えられます。しかし、宋(そう)時代(960~1279)以降を中心に木像(もくぞう)もわずかに残っていて、今日では中国の木造彫刻の特色を考えるうえで貴重です。
朝鮮半島でも、仏像の大半は石か金属でできています。特に新羅(しらぎ)・高麗(こうらい)時代の銅製の仏像や梵鐘(ぼんしょう)に、たいへん高度な技術と優れた美意識をみることができます。
(5) 木造菩薩立像(もくぞうぼさつりゅうぞう) 1躯
像高116.0センチ 中国・宋~元時代(13世紀)
中国では珍しい木彫の仏像です。全身を一木(いちぼく)から彫り出すこの像は、胸飾りの形などに唐(とう)時代以来の古い様式をみせています。額(ひたい)の上に仏像を戴(いただ)くことから観音菩薩と思われます。
(6)木造釈迦三尊像(もくぞうしゃかさんそんぞう) 3躯
総高(釈迦)44.6センチ (文殊)72.2センチ (普賢)77.1センチ 中国・明時代(16世紀)
象に乗る普賢菩薩(ふげんぼさつ)、獅子に乗る文殊菩薩(もんじゅぼさつ)を伴う釈迦三尊像(しゃかさんそんぞう)です。いずれも一木(いちぼく)から体と台座を彫り出しています。台座の蓮弁(れんべん)が着衣(裳(も))で覆(おお)われるなど、中国の仏像に特有の表現がみられます。
(7)銅造菩薩坐像(個人寄託) |
(7)銅造菩薩坐像(どうぞうぼさつざぞう)1躯
個人寄託 像高 74.4センチ 朝鮮半島・高麗時代(14世紀)
福岡県二丈町(にじょうまち)の一貴山(いきさん)に伝わった鋳銅製(ちゅうどうせい)の菩薩像です。作風から朝鮮半島製と考えられますが、目尻のつり上がった独特の表情は、あまり類例がありません。長崎県壱岐(いき)の金谷寺(きんこくじ)にはこれとほぼ同じ形の像が伝わっています。
(8)鍍金鐘(志賀海神社 寄託) |
(8)鍍金鐘(ときんしょう) 1口
志賀海神社 寄託 総高52.8センチ 口径30.5センチ 朝鮮半島・高麗時代(13~14世紀)
朝鮮半島の梵鐘は日本のものと比べて龍頭(りゅうず)の形や胴部(どうぶ)のデザインが異なっています。本鐘は小型ですが豊かな装飾にあふれ、高麗(こうらい)時代の中でも最も豪華な作品のひとつです。各部に当初の鍍金(ときん)(金メッキ)が残っています。
【国指定重要文化財】
▼地中の仏教美術
-瓦経(かわらきょう)・経筒(きょうづつ)-
仏教では釈迦が入滅(にゅうめつ)して一定の期間が過ぎると、仏法がすたれ災厄があふれる末法(まっぽう)の世になると説かれます。日本では平安時代の永承(えいしょう)7年(1052)がその初年と考えられ、再び仏が現れる時まで、経典を地中に埋めて保存しようとする信仰が流行しました。
瓦経(かわらきょう)は粘土板にお経を刻んで素焼きにしたもので、経筒(きょうづつ)は経典をいれる金属や石の筒です。いずれも壊(こわれ)れにくく、長期の保存にた堪えられるようにできています。
(9)瓦経(かわらきょう) 36面
筥崎宮 寄託 縦22.8センチ 横18.6センチ 平安時代(12世紀)
平成元年に東区の筥崎宮(はこざきぐう)境内から出土した瓦経(かわらきょう)です。全部で36面あり、このうち35面に「仁王般若経(にんのうはんにゃぎょう)」、残りの1枚に「般若心経(はんにゃしんぎょう)」が刻まれています。このように瓦経が一個所からまとまって出土することは希(まれ)です。
【福岡市指定文化財】
(10)滑石製経筒 |
(10)滑石製経筒(かっせきせいきょうづつ) 2口
総高35.0センチ 口径22.1センチ 平安時代(12世紀)
福岡早良区の西油山(にしあぶらやま)出土と伝える経筒(きょうづつ)です。どちらも柔らかい滑石(かっせき)を削り出して作られていますが一方はきれいに整えられ、一方は荒い鑿後(のみあと)をみせています。銅製の経筒(きょうづつ)などを入れる外容器(がいようき)として用いられたと考えられます。
(11)石造三重塔(せきぞうさんじゅうのとう) 1基
総高230.0センチ 江戸時代(17~19世紀)
凝灰岩(ぎょうかいがん)製の三重塔で、各屋根とそれを支える軸部(じくぶ)、頂上の相輪(そうりん)から構成されます。軸部の各面には仏像を浮彫りし、屋根には瓦や垂木(たるき)などの建築部材を丁寧にあらわしています。仏像の形などからみて近世のものと考えられます。
(末吉 武史)