平成12年7月25日(火)~9月24日(日)
女性が子供を背負いながら 松囃子の行列を見ている 「筑前名所図会」 |
子供たちにとって、江戸時代とはどのような時代だったのでしょうか。当時は現在とは社会の仕組みが違い、
自由な生き方をするということについては、選択肢(せんたくし)が限られていました。その中で、子供たちが世の中を生き抜くための苦労をしたという点で、現在の子供たちと違っていたかもしれません。その一方で、多くの子供たちは、よく遊び、学んでいたように思われます。
本展示では、館蔵資料の中から江戸時代の子供たちに関わる資料を展示し、その姿を垣間(かいま)見てみたいと思います。
1.子供をいつくしむ
今も昔も、親がわが子のすこやかな成長を願う気持ちに変わりはありません。江戸時代に描かれた子供の絵を見ると、幼い子供が母親、もしくは母親代わりの女性とともに描かれている場面が実に多いことに気づかされます。例えば筑前国の名所旧蹟(めいしょきゅうせき)の案内本である「筑前名所図会(ちくぜんめいしょずえ)」の挿(さ)し絵(え)をみますと、正月の祭りである松囃子(まつばやし)の行列を子供を背負いながらみている女性、川渡しの船に先に乗り込んだ父親に、自分の子を抱き取らせようとしている娘、子供をおぶって井戸水を汲みに来る女性など、子供が大切にされている様子が描かれています。
そして、親は子供が無事に成長すると、それを感謝し、祝いました。毎年巡ってくる雛(ひな)祭り、現在の七五三のもととなる髪置(かみおき)、袴着(はかまぎ)、帯解(おびとき)の儀式で我が子の成長を祝福し、これからの健(すこ)やかな成長を願ったのです。そして、武家の男子は15歳で元服をして初めて大人と見なされました。女児は初潮があって大人と見なされました。
「次郎左衛門雛」 |