平成16年3月30日(火)~6月27日(日)
仏像にはさまざまな種類があり、それぞれ決まった性格やはたらきがあります。また、その姿には経典(きょうてん)にもとづいた意味や、作った人の想(おも)いが込められています。
このような仏像を理解するために、この展示では12の問題を用意しました。鋭い観察眼と自由な想像力を働かせて、じっくりと考えてみましょう。答えはきっと仏像が教えてくれるはずです。
Q1 ご主人様は誰?
1. 木造獅子 |
我(わ)が輩(はい)は獅子(しし)である。こう見えても以前はご主人様を背中に乗せていたのだ。そのご主人様って誰?
仏像の中には動物に乗った姿であらわされるものがあります。例えば象に乗る普賢菩薩(ふげんぼさつ)、孔雀に乗る孔雀明王(くじゃくみょうおう)、牛に乗る大威徳明王(だいとくみょうおう)など。これらの動物はいずれもインドで神聖視されていたため、仏像と組み合わされたと考えられます。
もちろん獅子(ライオン)もそのひとつで、仏教では王や釈尊の権威を象徴するほか、釈尊の弟子の中で最も智慧(ちえ)がある文殊菩薩(もんじゅぼさつ)の乗り物として登場します。 この獅子も本来は背中に台座があり、文殊像が乗っていたはずですが、今では台座が失われて別々になっています。
2. 木造観音菩薩立像 |
Q2 元祖、癒し系。
私の名前は観音菩薩。えっ?体も細く顔も女性みたいって?観音様って男性?それとも女性?
仏像の中にはこの観音菩薩像のように、女性のような優しい表情やプロポーションをもつものがあります。しかし、観音菩薩は経典の中で「善男子(ぜんなんし)」と記されているので、男性であることは明らかです。
では観音像の表現が時として女性的であるのはなぜでしょうか。どうやらそれは、この菩薩が様々な姿に変身して苦しむ人を救うと説かれることと関係しているようです。
つまり、美しく優しい女性に変身した観音様に癒(いや)されたい!という想いを形にしたわけです。でもそれって男性だけの願望?
Q3 立体パズル?
3. 木造如来像残欠 |
この仏像は、体の前面しか残っていません。もとは他にどんな部分があったのか考えてみましょう。
仏像を木で作る場合、全身を1本の木から彫り出すことは当然のように思われます。しかし、実際には部分ごとに作って組み合わせた方が簡単で、しかも小さな材木で大きな仏像を作ることができます。
この仏像は平安時代後期(11~12世紀)に作られたものですが、長い年月のうちに壊(こわ)れて今では体の前面しか残っていません。しかし材の継ぎ目を観察すると、背中と両肩、そして坐(すわ)ったかたちの脚の部分を組み合わせてできていたことがわかります。