平成16年3月30日(火)~6月27日(日)
Q10 仏像は語る。
いわゆるひとつのお地蔵様。でもよく観察しましょう。像の横に何か文字が彫ってありませんか?
仏像には必ず作者と、それを作らせた人がいます。このような人たちが仏像に自分の名前や、願い事、日付などを書き込むことがあります。これを「銘文(めいぶん)」と呼びます。
この地蔵菩薩像は福岡市東区箱崎にあったもので、脇に「慶長(けいちょう)17年(1612)1月17日」と日付が彫られています。地蔵菩薩は死者の魂を救う仏なので、この像も死者の供養のために作られたのでしょう。日付は死者の命日(めいにち)かもしれません。
Q11 笑いに秘密あり。
この吉祥天(きちじょうてん)像の表情に注目してみましょう。笑っているのは、何かうれしいことでもあったから?
吉祥天(きちじょうてん(きっしょうてん))は本来、インドのラクシュミーという、美と繁栄をつかさどる女神です。日本でもその性格は受け継がれ、幸福をもたらす女神として信仰されました。その姿には手に如意宝珠(にょいほうじゅ)(何でも願いがかなう不思議な珠(たま))をもつという特徴があります。
実はこの吉祥天像、ニッと笑ったような顔をしているのも、その幸福の神としての性格が関係しているようです。「笑う門(かど)には福来たる」といいますが、吉祥天像には拝む人がなるほどと納得するような、福々しい表情が与えられたのでしょう。
Q12 仏像は生きている。
これは日蓮上人(にちれんしょうにん)という鎌倉時代のお坊さんの像です。大きな目がキラッと光っているのはどうして?
仏像の目が生きた人間のようにキラキラ光っているのは、実は目の部分に水晶やガラス玉を嵌(は)め込んでいるからです。これは「玉眼(ぎょくがん)」と呼ばれる技法で、日本では平安時代の終わり頃(12世紀)から登場しています。
では玉眼はなぜ用いられるのでしょうか。それは仏像にも現実に生きているかのようなリアルさが必要とされたからです。この像にもおそらく生きて、そこに在(あ)るかのような存在感が求められたからこそ、玉眼が用いられたのでしょう。
(末吉武史)