平成16年11月16日(火)~平成17年1月10日(月)
ポスター「六月四日むし歯予防デー」 |
本展示は、明治・大正・昭和の3時代を通して、日本の社会や家庭での子どもの位置づけがどのように変化したかをたどるものです。
次世代を担(にな)う子どもには大きな期待が寄せられています。小さな子どもの可愛いらしさには心が和(なご)みます。子どもを取り巻く環境は常に穏やかなものとは限らず、子ども達は社会状況に翻弄(ほんろう)されたこともあります。しかし成人した大人にとって子どもは、自分の幼少の頃を思い出し、また未来への希望を託すことができる大切な存在です。だからこそ子どもを描く時には、その愛らしさや無邪気(むじゃき)さが強調されるのです。この、子どもを見つめる大人のまなざしが、本展示の出発点です。
近代の子どもを取り巻く状況の変化は、まず明治時代に学校制度が導入されたことに始まり、ついで20世紀に入ると、子どもは家庭内で両親に愛護される存在となり、さらに昭和6 (1931) 年に「十五年戦争」が始まると、子ども達も総力戦体制を支える役割を担うことになりました。
本展示でとりあげた明治初期から昭和20年頃までのおよそ70年間という短期間に、子どもの周囲で生じた変化は、社会状況の変化を如実に反映するものでした。子どもは時代を映し出す「鏡」なのです。
1 学校で学ぶこども
明治維新によって日本の社会体制は大きく変化しました。明治5 (1872) 年の「学制頒布(がくせいはんぷ)」に始まる学校制度の創設により、国民皆学(こくみんかいがく)と教育の機会均等という方針が打ち出され、子ども達は皆小学校へ通うよう決められました。それ以前にも藩学や寺子屋などの教育機関や、「子供組」や「若者組」などの組織がありましたが、近代教育制度の導入によって、子どもは、新国家を建設する“1人の国民”として教育されることが求められたのです。20世紀初頭に、小学校の就学率が90%に達するまでは、小学校に通えない子どもも多く、中学校以上の上級学校への進学は限られたものでしたが、近代の新しい学校制度は、子どもが家柄や身分にとらわれず、進学によって将来を切り開いていくことを可能にしたのです。