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No.264

歴史展示室

身近な道具の近代史1

平成17年7月20日(水)~9月19日(月・祝)

 『赤毛のアン』には、主人公のアンが、髪の毛の色をからかった同級生のギルバートの頭に 石盤(せきばん)を振り下ろして、石盤を真っ二つに割ってしまうという場面があります。この場面は、1877年9月、アンが11歳の時の出来事として描かれています。アンが小学校へ通っていたのと同じ頃、明治5(1872)年の学制からスタートした日本の小学校でも、小学生は石盤に 石筆(せきひつ)で文字を練習していました。  普段、何気なく使っている道具にも、さまざまな歴史があります。今回の展示では、身近な道具の一つである筆記具の近代史を紹介します。


「筆」の時代


祝部至善「」もぐさ売り

 徳川家康(とくがわいえやす)(1542~1616 )や伊達政宗(だてまさむね)(1567~1632)の遺品の中から鉛筆が発見されていますが、本格的に日本で鉛筆が使われるようになるのは、明治時代になってからのことです。鉛筆やペンなどの硬筆が一般的になる以前は、毛筆=筆がもっとも基本的な筆記具でした。また、筆を携帯するための道具である矢立(やたて)は、日本独自の道具のようです。 祝部至善(ほうりしぜん)が、昭和30年頃に明治の頃の博多の風俗を描いた絵のなかに、「もぐさ売り」が腰に矢立を差している図があります。
 使用する筆記具がちがうと、文字の書き方もちがってきます。さらに、数字の書き方がちがうことで、計算の仕方もちがってくるのです。数字を筆で縦書きにしている帳簿では、筆算をすることができません。計算をするにはどうしても算盤(そろばん)が必要になります。硬筆で位取りをそろえて数字を書くことができて初めて筆算が可能になります。ですから、「筆」の時代、寺子屋で人々が学んだのは「読み・書き・算盤」なのです。


筆記具の文明開化


三菱鉛筆「局用鉛筆」
(復刻版)

  1560年代にイギリスで良質の 黒鉛(こくえん)が発見され、筆記具として利用されるようになりました。鉛筆の歴史はここから始まるといってよいでしょう。最初は、黒鉛の固まりを棒状にして、木に挟んだり布を巻いたりして使っていました。18世紀末には、黒鉛の粉と粘土を混ぜ合わせて焼き固めるという芯の製造方法が開発され、現在も基本的にはこの方法で鉛筆の芯がつくられています。
 明治時代になると日本でも、鉛筆国産化の試みが始まりました。1873年にウィーンで開催された万国博覧会に出品された鉛筆製造機の図解をもとに、日本からの伝習生が鉛筆の製造方法を研究しました。その成果を引き継いで、小池卯八郎(こいけうはちろう)という人物が試作に成功し、明治10(1877)年に東京・上野で開催された第一回内国勧業博覧会の「教育ノ器具」部門に鉛筆を出品しています。また、三菱鉛筆の創業者である 眞崎仁六(まさきにろく)は、1878年のパリ万国博覧会を訪れた際に、外国製のさまざまな鉛筆にであい、独学で鉛筆製造に取り組みました。眞崎は、最初に三つ 叉(また)になった軸の先に芯をはさむ「はさみ鉛筆」、そして、明治34年には「削り鉛筆」( 現在の普通の鉛筆 ) を逓信省に納入するようになりました。逓信省に納入したこの「局用鉛筆」は、昭和34(1959)年まで全国の郵便局で使われていました。
 『風俗画報』の明治23年の記事(明治23年10月10日発行 第21号)に、筆を作る人が全国どこにでもたくさんいるのに比べ、鉛筆製造者は、東京や大阪に若干、地方にほんのわずかいるだけであると歎いているものがあります。また、同じく明治24年の記事(明治24年7月10日発行 第30号)では、国産鉛筆はあるものの、その品質は遠く舶来品には及ばないとあります。
  第一次世界大戦(1914~18)の頃には、鉛筆の主要な生産国であったドイツやアメリカが参戦したことで、世界的に鉛筆が不足し、日本製の鉛筆が欧米諸国に輸出されました。しかし、明治時代の終わり頃からの鉛筆業界の好況にともなって現れた粗悪品も輸出されてしまったために、世界市場での日本製鉛筆の評判は、「安かろう悪かろう」というものでした。

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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
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