アーカイブズ

No.265

考古・民俗展示室

考古資料に見られる草花

平成17年8月23日(火)~10月30日(日)

中国宋時代の草花文

・折枝文 (せっしもん)
中国宋時代に入ると花弁文に加え、花枝を折った図案が多く用いられるようになりました。宋時代に入って目覚しい発展を遂げる陶磁器にも取り入れられました。この文様は博多遺跡群出土の陶磁器にも多く見られます。
越州窯青磁碗(えっしゅうようせいじわん)
(鴻臚館跡 出土)内面には片切彫り(かたぎりぼり)(文様の線の片側を垂直に、他の片側を 斜めに彫る技法)と毛彫り(毛髪の様に細い線で文様を彫る技法)による精緻な花弁文が施されています。
白磁皿
(博多遺跡群出土)花弁文の他に折枝文を片切彫りしています。
黄釉鉄絵盤(おうゆうてつえばん)
(博多遺跡群 出土)力強く一輪や菱形にまとめた牡丹折枝文を描いています。並べられた資料から文様が簡略化される流れを追うことができます。同じ窯の製品が福岡市城南区田島京の隈経塚出土の経筒外容器の蓋(ふた)に用いられています(常設総合展示室に陳列されてい ます)。

青白磁合子(せいはくじごうす)
( 箱崎遺跡 出土)蓋天井部上に牡丹折枝文(ぼたんせっしもん)を型押しています。
龍泉窯青磁碗
(那珂遺跡群出土)内面に蓮華折枝文を片切彫りしています。
龍泉窯青磁碗・盤
(出土地不明)碗の内面に蓮華折枝文、外面は口縁部に雷文、体部にはラマ式蓮弁(ラマ教寺院の仏具に多く描かれたことによる)を片切彫りしています。盤の内底見込みには折枝文をスタンプしています。
耀州(ようしゅう)窯 青磁小碗
(博多遺跡群出土)内面に宝相花唐草文を型押ししています。黄釉鉄絵盤で見られた牡丹折枝文を文様に用いた軒丸瓦が博多遺跡群や香椎B遺跡などごく限られた遺跡で出土しています。生産地は不明ですが、博多に居住していた宋商人が関わっていたと推測されます。

和風化した草花文

•・和鏡  
 平安時代後期に入って鏡の文は中国の模倣から影響を受けつつも、独自の写実的な花鳥のデザインを取り入れ和風化した「和鏡」となります。奈良時代までは蝋(ろう)から原型を作り粘土で包み焼き締めた型に溶解した銅を流し込んでいましたが、平安時代に入ると型となる粘土に直接ヘラで押して文様を描くようになりました。瑞花鴛鴦五花鏡(ずいかえんおうごかきょう)から無界圏(むかいえん)・素紐(そちゅう)で断面蒲鉾形周縁を持つ円鏡を経て草花双鳥文などを主な文様とする細縁の円鏡へと変遷の流れを追うことができます。
 瑞花鴛鴦五花鏡(箱崎遺跡出土)の鏡背 面には周縁と同じ五花形の界圏をめぐらせ、内区は上下に瑞花(めでたい花)、左右に鴛鴦(おしどり)を配置しています。一段高くなった外区にも文様がありますが、鋳上がりが悪くよく分かりません。蓮華形の座紐に頂部を切った円錐形の紐を付けています。



萩双鳥鏡 (はぎそうちょうきょう)(博多遺跡群出土)、草花双鳥鏡(箱崎遺跡出土)無界圏・素鈕の円鏡で、鏡背面に草木と双鳥を鋳出しています。後者には方形の素紐が付いています。
萩蝶双鳥鏡 (箱崎遺跡出土)平安後期に多く見られる縁の断面形が細く外傾するもので、細く低い界圏をめぐらせ、菊花形の座紐に頂部を切った円錐形の紐を付けています。萩が内外区関係なく四房ずつ左右対称に外向きに配されていますが、双鳥は二羽とも左向きで、一方が羽根を広げるなど左右非対象となっています。左側の鳥の左には蝶様のものが配されています。
 鎌倉時代になると鏡はやや厚く、縁の断面が鏡面とほぼ直角となり、幅は厚くなっています。界圏はやや太く、文様も彫りが深くなり、鏡背面全体を埋めつくします。橘双鳥鏡・菊花双鳥鏡・松双鳥鏡(いずれも博多遺跡群出土)は鎌倉時代の特徴をもっています。

・漆器

 平安時代後期以降漆器の下地に漆の替わりに 柿渋(かきしぶ)(渋柿の実から採取した液)が利用されるようになって、 広く普及するようになりました。黒漆地に朱漆で身近な草花の文様が描かれています。

小皿 (博多遺跡群出土)竹葉・笹や水辺にたたずむ草文を描いています。
(博多遺跡群出土)中世のものの内外面には草文を描いています。中世末から近世初頭まで下った時期のものは、外面に露草、丸に抱き茗荷の家紋、花文を描いています。

花器 ―花生(はないけ)の受容―

 室町時代に入り、仏教の儀式である供花(くげ)から鑑賞を目的としたいけばながあらわれてきます。
龍泉窯青磁双耳瓶(りゅうせんようせいじそうじへい)
(那珂遺跡群出土)砧( きぬた)形の花生で、口縁部は水平に開き、頸部の左右に付く耳の片側と体部下半は欠失していますが、耳の下部には環が付きます。
景徳鎮青磁糸瓜形花生(けいとくちんせいじへちまがたはないけ)
(博多遺跡群出土)江西省景徳鎮産で、型作りで成形したものを貼り合わせています。口縁部下に壁掛け用の孔(あな)が穿たれています。 ( 佐藤一郎 )

  • facebook
  • twitter
  • instagram
  • youtube

最新情報を配信中

pressrelease

休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

Facata(博物館だより)

  • 福岡市博物館 市史編さん室
  • はかた伝統工芸館
  • ふくおか応援寄附
  • 福岡市の文化財

福岡市博物館

〒814-0001
福岡市早良区百道浜3丁目1-1
TEL:092-845-5011
FAX:092-845-5019