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No.290

黒田記念室

福岡神木ものがたり

平成18年11月14日(火)~平成19年1月14日(日)

1.綾杉(保存樹、香椎宮)

 神木(しんぼく)は、多くは神社の境内や神域にあって、 注連縄(しめなわ)などを張りめぐらして祭られた、神聖な樹木をいいます。代表的なものとして、奈良・ 春日大社(かすがたいしゃ)の榊(さかき) 、滋賀・日吉大社(ひよしたいしゃ)の桂(かつら)、京都・伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)の杉(すぎ)などがよく知られています。福岡では香椎宮(かしいぐう)の綾杉(あやすぎ)、太宰府天満宮の飛梅(とびうめ)なども全国的に知られた神木といえるでしょう。
 室町時代、伐採が禁じられていた筥崎宮(はこざきぐう)の神木である松を、正月の門松(かどまつ)や山笠(やまかさ)の飾り物として伐り取ってしまった話、江戸時代に太宰府天満宮の飛梅でつくられた 天神像(てんじんぞう)、福岡城本丸に植えられた御神木 松(ごしんぼくまつ)など、この展覧会では、あまり知られていない神木にまつわるものがたりを紹介します。





1 綾杉(香椎宮)-神宿るという神木と保存樹

 香椎宮(かしいぐう)の神木綾杉(あやすぎ)(写真1)は、神功皇后(じんぐうこうごう)が「永遠に本朝を鎮護すべし」と誓いを立て植えた杉で、葉が綾の様に交互に出ているので名付けられたといわれています。「ちはやふる香椎の宮のあや杉は 神のみそきにたてる成けり」(鎌倉時代の『新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)』)など、綾杉は多くの和歌に詠まれています。樹高21.5メートル、幹周り4.9メートルの綾杉は、現在福岡市 によって、都市の美観風致を維持するための保存樹に指定されています。


2 筥松(筥崎宮)-門松や山笠の飾り物にされた神木

 筥松(はこまつ)または「しるしの松」と呼ばれる筥崎宮(はこざきぐう)の神木の松は、応神天皇(おうじんてんのう)の胞衣(えな)(胎児の胎盤など)を箱に入れ、埋めたしるしとして植えられたといわれています。室町時代から江戸時代初期にかけて、筥崎松原の伐採禁止の 禁制 ( きんぜい ) が繰り返し出されています。その中で 、門松や山笠の飾り物のために、神木である筥崎松を伐採することを堅く禁止した 康正(こうしょう)2(1456)年の法令(写真2)が注目されます。ここには、神木の神威 を主張する中世領主の論理が現れているように思われます。



2.門松や山笠の飾り物のための採用を禁じた禁制(天地切断、田村文書)

3 一夜松(住吉神社)-始まりがわかる神木

 連歌師飯尾宗祗(れんがしいいおそうぎ)は、紀行文『筑紫道記(つくしみちのき)』のなかで、社殿の再建にたずさわった人物の言として、社殿に傾いた松が造営の邪魔になるので切ろうとしたところ、2、3日の間(一夜のうちではなく)に少しずつ、起き直って真っ直ぐになったという話を書き記しています。また、それは永享(えいきょう)11(1439)年のことであると書いています。これ以後、住吉神社(すみよしじんじゃ)の神木になった一夜松(いちやまつ)( 写真3)は、神木の始まりが確実にわかるめずらしい事例といえるでし ょう。


3.一夜松(住吉神社)
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9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
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