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No.299

歴史展示室

戦争とわたしたちのくらし16

平成19年5月29日(火)~7月22日(日)

20.陶製アイロン
20.陶製アイロン

今年も6月19日がやってきました。今から62年前の昭和20(1945)年6月19日夜半アメリカ軍の爆撃機B29が福岡市に焼夷弾を投下し、福岡市は大きな被害を受けました。現在この日は「福岡大空襲の日」として、戦争と平和について考える催しが市内各所で行われます。福岡市博物館でも平成3(1991)年より、6月19日前後に館蔵の戦時資料を展示する「戦争とわたしたちのくらし」展を開催してきました。 毎年6月前後にこの展示を行うにあたっては、ご覧いただく皆さんに、日中戦争から太平洋戦争へと続く時期の日本の社会を、様々な面から見直していただきたいと考えてきました。16回目となりました今回は、戦時期の衣生活に関する資料を中心に展示します。今年も皆さんが「戦争」について考えるきっかけになれば、と思います。


1 昭和初期の衣生活 着物も洋服も

明治時代に洋服着用が奨励されて以降、都市部の男性の仕事着・外出着は概ね洋服でした。昭和初期になると一部の女性は洋服を着るようになりました。都市の、先進的な服装を好む女性は、モダンガールを縮めた「モガ」などと呼ばれました。一般の女性は外出時も着物を着ることが多かったようです。銘仙(めいせん)などの実用的でおしゃれな生地が喜ばれ、大きな柄の華やかな着物が流行しました。男性も自宅では着物を着ることが多く、外では洋服を着るけれども、家に帰れば着物に着替える、という生活スタイルでした。


2 代用品の登場 スフを愛用しよう

スフはステープルファイバーの略で、綿や毛に代わる合成繊維として製造されました。破れやすく、洗濯にも弱かったのですが、戦争遂行にともなう物資不足と戦意高揚のため代用品使用が推奨されると、スフはその代表的な存在となりました。代用品が登場した背景には、少ない物資を戦争に必要な軍需品に優先的に使用しなければならない事情がありましたが、同時に、代用品を使うことで国民の戦争への意識を高める効果も期待されました。また昭和17年には婦人標準服が発表されました。これは着物のように打ち合わせて着る上着に、長い巻きスカートであれば着物のように、短いスカートを合わせれば洋装に、モンペをはけば防空服にもなる、というものでした。高級品や不要不急の品の新調は止められ、特に女性の衣服は、すでに手持ちの衣類であっても華美にならないよう指導されました。


3 防空演習 モンペをはいて

中国との戦争(日中戦争)が始まった昭和12年、国民が「防空」に留意するよう法律が制定されました。「防空法」です。この法律によって防空演習が行われたり、家庭に防火担任者を決めて空襲や毒ガス攻撃に対応できるよう準備することになりました。防空演習では、空襲や毒ガス攻撃への対処法が実演されましたが、訓練の対象は地域ごとに組織された警防団のメンバーや在宅の家庭婦人で、国民服やモンぺを着用するよう指導されました。


4 衣料切符 何を買おうかな、何が買えるかな

昭和16年12月8日、日本とアメリカ・イギリスなど連合国軍との戦争(太平洋戦争)が始まりました。年明けを迎えた昭和17年1月、衣料品の切符制が総合的に行われることとなり、2月から実施されました。衣料切符には甲種と乙種があり、甲種(80点)は郡部の住民に、乙種(100点)が市制が施行されている都市と大都市周辺地域の住民に与えられました。切符といっても、それだけで衣類が手に入ったわけではなく、衣料品を買おうとする時はお金の他に、品目毎に決められた点数分の切符が必要となるという仕組みでした。たとえば、背広上下を一着買おうとする時は40点、ワンピース一着は15点分の切符が必要でした。さらに翌18年には必要点数が引き上げられ、背広は50点、ワンピースは20点になりました。また、できるだけ切符を余らせるよう指導されました。衣料品の切符制は戦後の昭和25年まで続きました。

(野口 文)

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