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No.366

考古・民俗展示室

集い遊ぶ─福博の楽しみ─

平成22年7月13日(火)~9月20日(月・祝)

灯火管制のために電灯にかぶせるカバー
祇園宮御神号

はじめに
 みんなで何事か始める時や、問題が起こった時、私たちは寄り集まって事に当たることが多いものです。これを「寄合(よりあい)」と呼んできました。集会でもあるわけですが、この言葉のなかには、みんなで智恵や力を出して、寄り合わせるという意味があるように思います。そこには意を異にする人を論破して、一方的に自らの意見を通すような集会とは異なる趣があります。
 福博では様々な機会に集いました。「常会(じょうかい)」と呼ばれる隣組の集まりや、神社や寺の行事であったり、「講(こう)」と呼ばれる小さな集まりであったりです。「寄合」では、神仏の掛軸を飾り拝した後、話し合いをする習慣になっていました。正直に意見を交わすのを神仏が見守るというのが私たちの本来の集いの姿でした。また意見が対立した場合には、神仏の前ということで、最後にはお互いが譲れるべきところは譲り、協力できる道を見つけることができました。
 なんといっても寄合の楽しみは「直会(なおらい)」にありました。それまで、激しく意見を闘わせていた人々が同じ料理を食べて、同じ酒を飲むのです。ここでの酒はお祝いの酒であり、御神酒(おみき)でもあるわけで、神仏の前で和を誓う盃なのです。また、共食はわだかまりを残さない親睦の智恵でもありました。
 激論になった後の「直会」では会話には神経を使うものです。緊張をときほぐす技が必要とされました。博多などの町場では、これが特に発達してきました。冗談や洒落(しゃれ)などの笑いを巧みに盛り込んだ会話は場を和らげて、雰囲気を変えることができました。「博多にわか」などもその系譜にあります。ここに言葉遊びが生まれる素地があります。

庚申待幟
庚申待幟

1、神仏に見守られ寄り合う
 農村や漁村では、神仏の姿や名前を描いた掛軸を座敷の床の間などに飾り、その前に集いました。これは私たちの話合いの基本的なあり方です。小集団の集いである講には、信仰的なものと、互助的なものとありました。信仰的な講では、それぞれの集団が信仰する神仏の前に一堂に会し、お勤めなどの信仰行事を行います。伊勢参宮を目的にした「伊勢講(いせこう)」では祝詞(のりと)を、「念仏講(ねんぶつこう)」では、親鸞(しんらん)や法然(ほうねん)などの開祖の遺徳を絵図で絵解きしながら偲びつつ、阿弥陀の六字の名号(みょうごう)をみなで唱えました。もちろんこの後は直会となります。講独特の料理が並べられ、そこでは心ゆくまで肩のこらない会話で楽しんだのです。
 「庚申講(こうしんこう)」は、「庚申待(こうしんまち)」とも呼ばれ、寄り集まって夜通し語らい、飲食するものです。これにはおもしろい由緒があります。それは、人の頭・腹・足に三尸(さんし)の虫がおり、常に人の悪事を監視しているという。その虫は庚申(かのえさる)の日の夜の寝ている間に天に昇って天帝(閻魔(えんま)大王)に日頃の行状を告げ、罪状によっては寿命が縮められたり、その人の死後に地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕とされると信じられていました。だから、三尸の虫が天に昇れないように、庚申の夜は村中の人達が集まって神々を祀り、その後、酒盛りなどをして夜を明かすのだという訳です。筆者の田舎でも、子供の頃、「庚申様」(通称オコウシンサマ)がありました。座元の家に朝までいて、近所の子供同士で遊びました。もちろん大人たちは、直会で世間話に花が咲いていました。そんな懐かしい記憶があります。
 農村では当番の家の外には幟を立ててさる目印とし、座敷の床の間には、「申(さる)」にちなんで猿田彦大神の掛軸を祀りました。所によっては、青面金剛(しょうめんこんごう)や言わず聞かざる見ざるという三猿の絵を飾る場合もあります。庚申講を3年18回続けた記念に建立されたのが、村境や神社境内などに多い庚申塔(こうしんとう)なのです。

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開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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