平成22年9月22日(水)~11月14日(日)
幕洗いと幕出し
博多の人々にとって幔幕は、遊び日の何か浮き立つような気持ちを象徴するものでした。夏になると、若者たちは幕の洗濯に川へと出かけました。これを幕洗いといい、若者組の行楽のひとつでもありました。
秋になり、筥崎宮(はこざきぐう)の放生会(ほうじょうや)がはじまると、福博の人々は打ち揃って、お参りがてら千代の松原で野宴を催すものでした。これを「幕出し」といいます。町内が集まり、料理や酒、炊事道具や食器を長持(ながもち)に入れ、長持唄をうたいながら松原へと向かいました。商家の娘さんたちは、この日のために誂(あつら)えてもらった「放生会着物(ほうじょうやぎもん)」を何枚も持って行くなど、さながら振り袖行列の観があったといいます。
野宴の場所は幕が張り巡らされ、その柄や印から、どんな人々なのか周囲からも一目瞭然でした。そのため、大正の頃には、競い合うように大宴会が繰り広げられていたようです。
1枚の幔幕が、人々の暮らしのなかでいろいろな意味を担ってきたことを知って、もういちどじっくりと眺めてみると、また違った味わい方ができるかもしれません。
(松村利規)
金魚図幔幕(福岡市指定有形民俗文化財) 館蔵
七福神図幔幕 上桶屋町不動尊蔵
主な展示資料(名称/使用地または撮影地/員数)
- 紅白幔幕/博多区旧下洲崎町/1張
- 金魚図幔幕/博多区旧奈良屋町/1張
- 七福神図幔幕/博多区旧上桶屋町/2張
- 幕箱/博多区旧下店屋町/1個
- 幕出し写真(パネル)/東区箱崎/1枚