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No.377

美術・工芸展示室

装いの考古学

平成23年1月5日(水)~平成23年2月20日(日)

西区拾六町遺跡出土木製腕輪復元品
西区拾六町ツイジ遺跡出土木製腕輪復元品
西区石ヶ元古墳出土金環
西区石ヶ元古墳出土金環
>博多区雀居遺跡出土木製短甲
博多区雀居遺跡出土木製短甲

 発掘調査で出土する遺物に対してどのような色が思い浮かびますか。多くの人が暗く、単調な土色を連想するのではないでしょうか。
 確かに、出土する土器は茶色であったり灰色であったりと、どこか古めかしい色のイメージがあるでしょう。しかし、出土品の中には、鮮やかな色彩を持つものや現代に生きる私達にも新鮮に見えるデザインを持つものがあります。今回の展示では、縄文時代から古墳時代の資料に見られる色彩と文様にスポットを当て、過去に生きた人々の装いとその背景に迫りたいと思います。


資料に見る色彩
 出土品の多くは地味な生活道具や建築部材・農具等であり、その中の一部の資料だけに彩色が見られます。これらは主に装身具や武具・祭器などで、鮮やかな漆塗りの資料や彩色が施されているものがあります。このような資料が保存されるのは、湿度や土質などの様々な条件が整っていた時だけなので、低湿地遺跡などの特定の遺跡で発見される例が大半を占めます。本来はもっと多くの彩色資料が存在していたと考えられます。
 西区の拾六町ツイジ遺跡や早良区四箇遺跡から出土した木製の腕輪は弥生時代のはじめ頃に使用されたもので、意匠や色彩に強く縄文的な様相が見られますが、そのデザインは現在でも充分に通用します。全面に黒漆(くろうるし)を丁寧に塗り重ね、その上に朱漆(あかうるし)で文様を描いています。
 雀居(ささい)遺跡からは弓や短甲(たんこう)、西区の今宿五郎江遺跡からは盾などの木製品が発見されました。これらの木製品は弥生時代のものですが、縄文時代の弓と同じように朱漆や黒漆で彩色されていました。漆を重ねて塗ることで、彩色と部材の補強を行っていました。この黒と赤のコントラストは両時代を通じて好まれた色彩であったようです。この他にも漆塗りの容器が発見されています。残念ながら木製品の本体は腐食して残っていませんでしたが、器全体を覆っていた漆の皮膜が残っていました。
 勾玉・管玉などの石製品は、木製品とは異なり、埋まっていた環境にあまり影響されず当時の姿を残しています。また、石製の装身具は使用された石材の色彩がそのまま反映されるため、石自体の持つ色に対して時代毎の指向性が見られます。石材の色にはどんな意味があったのでしょうか。
 勾玉には赤色系の瑪瑙(めのう)をはじめ、緑色の翡翠(ひすい)、青色系の碧玉(へきぎょく)等が使用されました。これらはありふれた石ではなく、交易によって遠くから持ち込まれたものも多くあります。同じ石材でも埋まっている位置で生成条件が異なるため、異なる色を発色するものもあります。東区の三苫(みとま)遺跡で発見された打製石器には黄色系の瑪瑙が使用されていました。このように素材の色を選んで使用することは、当時の人々の色彩感覚が豊かであったことを示しています。この感覚は、自然と共に生きることで四季折々に躍動的に変化する色彩に畏怖(いふ)し、季節の実りに感謝することで育まれていったと考えられています。
 弥生時代以降にはガラス製の装身具が朝鮮半島からもたらされ、使用できる色の選択肢が増えたようです。ガラス製の装身具は、天然石が持ち得ない深い青味を発色するため人々に好まれたことでしょう。
 数ある色の中でも、金色は特に人々を惹(ひ)き付けるものでした。弥生時代にもたらされた金印は、2000年経った現在でも輝き続けています。現在のイヤリングにあたる金環(耳環)は古墳時代の墳墓から副葬品として発見されます。金無垢(きんむく)のものから銅線に鍍金(めっき)したものまで様々な種類がありますが、いずれも光り輝く金色に人々は強く魅了されたことでしょう。西区の石ヶ元8号墳から出土した耳環は環の切れ目に青色のガラス小玉を挟み込んだもので、現在のアクセサリーに通じる高い色彩感覚と装飾性を感じることができます。
 発掘調査で大量に出土する土器の多くは茶色や灰色の単色ですが、時として彩色された土器も出土します。彩色にはベンガラや朱、炭等の顔料を使用しており、赤や黒に彩色し文様を描くことで他の土器とは異なる用途であることが強調されています。このような特殊な彩色土器は、祭祀等の特別な時に用いられたと考えられています。
 以上のように木製品や土器には黒と赤の2色が好んで使われていたようですが、それ以外の装身具等は青や赤、緑などと様々な色で彩られていました。私たちが想像している以上に華やかな時代だったと考えられます。

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