平成23年9月21日(水)~11月6日(日)
孫文(1866~1925) |
孫文の来日
大正2(1913)年2月13日から3月23日にかけて、孫文の一行が来日しました。中華民国臨時大総統を袁世凱に譲り、孫文は「鉄路総弁」に任命されていました。
もちろん、これ以前も以後も孫文は何度も日本を訪れ滞在しています。しかし、日本政府が友好的に孫文を遇したのはこの時だけでした。
孫文一行は、2月11日に上海を出発し、13日朝に長崎港着。長崎からは門司・下関を経由して鉄道で東京へ向かい、14日夜、東京・新橋駅に着。当初2週間の予定だった東京滞在を延長して、3月5日朝、新橋駅を出発するまで19泊20日を東京で過ごしています。
孫文一行は、長崎から東京までを往復し、復路では、横須賀、名古屋、奈良、大阪、神戸、広島などに立ち寄り、九州に戻りました。当時の新聞によれば、3月17日午後に福岡入りした孫文は、翌18日、複数の歓迎会に出席し、九州帝国大学医学部で講演をしたほか、平岡浩太郎(ひらおかこうたろう)の墓参り、玄洋社(げんようしゃ)訪問、安永東之助(やすながとうのすけ)の墓参りをしています。当時の「福岡日日新聞」(「西日本新聞」の前身)の記事から、福岡滞在中の一行のスケジュールを再現すると、次のようになります。
崇福寺(福岡市博多区)安永東之助の墓前の 孫文一行(大正2年3月18日) |
- 3月16日(日)
- 05:50 下関停車場着、山陽ホテル(山口県下関市)で休憩
08:20 門司鉄道桟橋着、戸畑へ
09:00 明治専門学校(現・九州工業大学)を訪問
安川敬一郎邸(福岡県北九州市戸畑区)へ
泊:安川敬一郎邸 - 3月17日(月)
- 08:30 安川邸を出発
09:00 八幡製鉄所(福岡県北九州市八幡東区)を視察
13:20 八幡停車場発、博多へ
15:30 博多駅着、貴賓室で休憩
16:00 常盤館(ときわかん)(水茶屋(みずちゃや)、福岡市博多区千代2丁目)へ移動
17:00 孫文の代理が福岡日日新聞社(須崎土手町(すざきどてのちょう)、福岡市中央区天神4丁目)を訪問
18:00 安川ら主催の晩餐会
泊:常盤館 - 3月18日(火)
- 10:00 常盤館を出発
聖福寺(しょうふくじ)(福岡市博多区御供所町(ごくしょまち))
平岡浩太郎の墓参り
平岡良助宅(天神町(てんじんのちょう)、福岡市中央区天神2丁目)を訪問
中野徳次郎別邸(大名町(だいみょうまち)、福岡市中央区大名2丁目)を訪問
玄洋社(西職人町(にししょくにんまち)、福岡市中央区舞鶴2丁目)を訪問
13:00 常盤館で旧友会
15:00 崇福寺(そうふくじ)(福岡市博多区千代4丁目)安永東之助の墓参り
九州帝国大学医学部(現・九州大学医学部)を参観
17:00 九州帝国大学で講演会
18:00 公会堂(現・旧福岡県公会堂貴賓館、福岡市中央区西中洲)で歓迎会
泊:常盤館 - 3月19日(水)
- 08:30 博多駅発、大牟田へ
10:58 大牟田駅着、三池築港へ
11:10 四ツ山発電所着
11:40 三井港倶楽部(大牟田市)着、昼食会
13:20 三井港倶楽部出発、炭山などを視察 宮崎滔天邸(熊本県荒尾市)へ
15:30 万田(まんだ)炭坑(熊本県荒尾市)へ
16:30 コークス工場を見学
17:00 三井工業学校(現・福岡県立三池工業高校)へ
17:40 三井港倶楽部へ
19:00 三井港倶楽部で晩餐会
泊:三井港倶楽部 - 3月20日(木)
- 08:48 大牟田駅発、熊本へ
福岡市入りの前は、戸畑の明治専門学校と八幡製鉄所を訪問し、大牟田では三池港の諸施設などを視察しているのに比べ、福岡では「旧友」を訪ねる類のスケジュールが目立ちます。