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No.406

企画展示室1

福岡城下の道

平成24年8月14日(火) ~10月21日(日)

3、道は見た目が大事
 物騒な話ばかりになりましたが、一方では、城下の道は見た目の美しさや清潔さも重視されました。特に幕府(ばくふ)の役人が通る前は掃除と防火対策が徹底されました。そして、役人が通る当日には空き店舗にも商品を並べ賑やかさを演出し、見た目の悪い商品は目立たないように陳列するよう町に指示が出されました(「津要録」巻二・三等)。博多の呉服店を福岡に強制的に移転させようとした出来事(「(同)」巻一二~一四・一六等)には、福岡の道は賑やかであるべき、という領主側の考えがよく表れています。
 こうした「努力」が実ったのか、19世紀に城下を訪れた尾張(おわり)商人は博多を「通筋の町屋は大形瓦ぶきにて蔵造りなるに、其外の町々は茅葺(かやぶき)多し」とする一方、福岡に対しては「家中(かちゅう)町は町はゞ広く、家造りも博多よりはまさりて、町筋華好(きれい)なり」という印象を抱いています(資料16)。また、オランダ人医師ポンペは「福岡は一見して日本の軍都の感がある。そこには大変幅の広い街道があり、その多くは直角に交叉し碁盤のようである。全体にきちんと清潔で、広壮な建物は庭と壁で周囲を取り囲み」として、福岡の町を賞賛しています(『ポンペ日本滞在見聞記』)。

4、道には決まりがある
 こうした道筋の美しさ、清潔さ、安全を維持する為に、城下の人々は道に対して様々な役目を負っていました。道のメンテナンスについては、一町ごとに傍示杭(ぼうじくい)が打たれ掃除の受持範囲が決められ、橋や石垣の修理の際には、資材は領主側で用意するものの、労働力については町側が差し出す必要がありました(「津要録」巻一二等)。治安維持と防火対策については、無提灯(むちょうちん)の通行人のチェック、くわえ煙管(きせる)の禁止、番所での夜通しの火の番、風の強い夜の見廻り等が決められていました(「(同)」巻九、一三、二六)。また、身分秩序の維持という面では、武士と町人がすれ違う際には町人は道の端に寄らなければならない、という決まりもありました(「(同)」巻一三)。
 18世紀前期には、城下の道を維持するために、「道奉行(みちぶぎょう)」という役職も存在しました。道奉行は主に城下の見廻りが仕事で、掃除・屋敷の管理・道路利用の状況を細かくチェックしました(「(同)」巻八、資料17)。

5、道には様々な使い道がある
 城下の道は人とモノが往来する以外の使われ方もしました。その最たる例が松囃子(まつばやし)や山笠(やまかさ)といった都市祭礼です(資料15)。山笠の時期には各町に置かれた門が取り払われたといいます(「津要録」巻一四)。また、堀端や橋のたもとの広小路(ひろこうじ)は芝居や相撲の興行場所となり、城下の人々の娯楽の場となりました。他にも毎年正月5日には、武士が大名町(だいみょうまち)の通りに集まり「馬乗初(うまのりぞめ)」といった行事を行ったり(『筑紫史談』二四集)、殿様の葬送行列や参勤交代(さんきんこうたい)での見送りを城下の道で行ったり、年中行事や儀礼の場面でも道は使われました。
 日常的な部分に目を移せば、当時の町は現在の様に街路で区切られるのではなく、道を挟んで一つの町が構成されていました。道は同じ町内の人々が交流する空間でもあったと言えるでしょう。博多には17世紀末で52ヶ所の辻井戸があったといい(「津要録」巻四)、道の端には排水路が張り巡らされていました(資料19~23)。道は人々が商いをして井戸端会議をする生活空間でもあったわけです。

三味線はダメ(資料26)
三味線はダメ(資料26)

おわりに
 明治10(1877)年に出た「違式●違条例図解(いしきかいいじょうれいずかい)」(資料26)は今で言う軽犯罪を絵入りで解説したものですが、その中に人力車や馬車の暴走と道端での芸能を禁じる条項が入っています。近代になり徐々に道の使われ方が変容していく様子がここから読み取れます。道はとにもかくにも人・モノを素速く安全に移動させるための空間へと変わっていったのです。
(宮野弘樹)

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pressrelease

休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

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