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No.408

企画展示室3

石の道具-旧石器・縄文時代の石器-

平成24年10月2日(火) ~12月27日(木)

ナイフ型石器(元岡遺跡)
ナイフ型石器(元岡遺跡)

 遺跡の発掘調査でもっとも多い出土品は土器などのうつわです。その次は石器でしょう。この他に金属器や木器・骨角器などが出土しますが、木や骨などの有機質はよほど条件が整わないと腐ってしまい残りません。鉄などの金属器が大陸から伝わるのは弥生時代になってからのことです。それ以前の旧石器、縄文時代の暮らしの中では、石器果たす役割は私たちが想像するよりも大きなものだったと考えられます。特に土器が発明される以前の旧石器時代の遺跡では、出土する遺物はほとんど石器のみです。小さな石器だけが、人々の活動を知る手がかりになります。今回の展示では、主に市内で出土した旧石器時代と縄文時代の特徴的な石器を集め、その移り変わりをたどります。

旧石器時代
 最初に石器を作り始めた人類は約200万年前にアフリカに登場した原人と言われています。彼らは約50万年前には中国の北京周辺にまで達し、出土した化石人骨は北京原人として知られています。その後約20万年前には新人(ホモ・サピエンス)が出現し4~5万年前には極東アジアに到達したと考えられています。
 日本列島で確認されている最も古い人類の痕跡は、やはり石器で約3万5千年前のものとされています。これより古いと言われる石器もありますがいまだ探求が行われているところです。現在ではこれ以降の時代を後期旧石器時代と呼んでいます。この時代には、素材となる礫から薄い剥片(はくへん)(破片)を連続的に剥(は)ぎ取る「石刃技法(せきじんぎほう)」と呼ばれる技術が生まれました。以降、この技術で得た剥片を素材として多様な石器が作られます。
 ここで一つの大きな自然災害に触れておきます。約2万5千年前のこと、鹿児島湾北部の姶良(あいら)カルデラで非常に大規模な火山噴火が起きました。この噴火による火砕流は南九州を覆い壊滅的な被害をもたらしたと考えられます。火山灰の一部は北海道にまで達しました。今日この火山灰の層が関東の遺跡でも確認されAT火山灰層と呼ばれています。そして時代を区切る鍵(かぎ)層として位置づけられ、後期旧石器時代を前半と後半に分ける指標になっています。
 福岡市内ではこのAT火山灰が確認されることは少なく、その下から石器が出土した例はありません。しかし周辺地域の石器との比較から、南区柏原(かしわら)遺跡、早良区有田(ありた)遺跡などで出土している台形様(だいけいよう)石器がAT火山灰をさかのぼる市内で最も古い石器と考えられています。また、先の石刃技法で剥(は)ぎ取った剥片の一部に調整を加えたナイフ形(がた)石器がAT火山灰降下以前に登場し、博多区諸岡(もろおか)遺跡や有田遺跡で出土しています。

台形様石器(柏原遺跡)
台形様石器(柏原遺跡)

 ナイフ形石器は以後、長期にわたって日本列島全域で見られる代表的な石器で地域・時期によって様々な形があります。名前の通りに物を切る・削る使い方のほか、槍の先に付けて狩猟具として使用されたと考えられています。石器の用途は形からだけでは判断は難しく、名称も必ずしも機能を表していません。
 AT火山灰降下後の後期旧石器時代後半は最も寒冷化が進んだ最終氷期の最寒期と呼ばれる時期です。平均気温が現在よりも7度ほど低く、そのため海水面が100m以上低かったとされています。玄界灘には陸地が広がり、朝鮮半島との海峡は狭まりました。この時期には剥片尖頭器(はくへんせんとうき)と呼ばれる槍先(やりさき)形の石器が九州を中心に出現します。これと同じ形の石器が同時期の朝鮮半島で出土しており、狭い海峡を越えて伝えられたと考えられています。大陸との交流を物語る石器です。市内では有田遺跡、久保園(くぼぞの)遺跡、元岡(もとおか)遺跡などで出土しています。
 この寒冷期には剥片尖頭器に続いて、三稜尖頭器(さんりょうせんとうき)などの槍の先に装着したと考えられる大型の石器が段階的に出現します。その槍を持った人々が追った対象は、今日では絶滅したナウマン象やオオツノジカなどの大型獣であった可能性があります。

剥片尖頭器(久保園遺跡)
剥片尖頭器(久保園遺跡)
細石刃(羽根戸遺跡)細石刃着装例(模型)
細石刃(羽根戸遺跡) …右
細石刃着装例(模型) …左

 旧石器時代が終わりに近づいた約一万五千年前にはナイフ形石器が消滅し、変わって細石刃(さいせきじん)と呼ばれる石器が大陸から伝わりました。細石刃は小さな石材から連続して剥(は)ぎ取った細長い石刃で、並べて骨や木の柄に装着し、組み合わせ道具として使用しました。細石刃は少ない石材から効率よく作る事ができ、付け替えも可能な画期的な道具でした。市内では博多区諸岡(もろおか)遺跡、西区吉武(よしたけ)遺跡など各地で出土しています。
 これまで取り上げたナイフ形石器や尖頭器などの剥片(はくへん)を加工して作る石器は、黒曜石(こくようせき)やサヌカイトという石材が好んで使われています。北部九州には佐賀県伊万里市の腰岳(こしだけ)や松浦半島などに質の良い黒曜石の産地があり、ここから運ばれた石材が福岡地域の石器の主体になりました。サヌカイトは尖頭器(せんとうき)などのやや大きめの石器に使われることが多く、佐賀県多久(たく)市周辺に産地があります。

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