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No.410

企画展示室1

福岡図巻を読む

平成24年10月23日(火) ~12月24日(月・祝)

2、どこの風景を描いているか
 次に「福岡図巻」が、どこの地域を描いているのか見ていきましょう。絵巻を開いていくとまず現れるのは鳥飼八幡宮(とりかいはちまんぐう)(中央区鳥飼)です。さらに唐人町(とうじんまち)(中央区唐人町)周辺が描かれ、黒門橋(くろもんばし)と黒門(中央区黒門)へと続きます。
 次に描かれるのは荒戸山(中央区西公園)です。黒門~荒戸山間が描かれていないのは落丁があるためです。続いて福岡城(中央区城内ほか)、荒戸の波戸、福岡城下(中央区天神ほか)へと進みます。さらに、福岡城下の東側の出入口である東取入口門(ひがしとりいりぐちもん)(桝形門(ますがたもん)・中央区天神)から西中島橋(にしなかしまばし)、中島町(博多区中洲・中洲中島町)、東中島橋に続き、博多の町並みが描かれています。
 博多の東側の出入口である石堂口門(いしどうぐちもん)(博多区中呉服町)から千代(ちよ)の松原(博多区千代ほか)へと向かうと、その先に筥崎宮(はこざきぐう)(東区箱崎)が姿を現します。筥崎宮の先は、多々良川(たたらがわ)(東区多々良)、名島(なじま)(同名島)、香椎宮(かしいぐう)(東区香椎)、立花山(たちばなやま)(東区・糟屋郡新宮町・同久山町)と東に向かい、海の中道が描かれます。
 海の中道の背景には、新宮(しんぐう)(糟屋郡新宮町)、津屋崎(つやざき)(福津市津屋崎)、神湊(こうのみなと)(宗像市神湊)、鐘崎(かねざき)(宗像市鐘崎)などの地域、相島(あいのしま)(糟屋郡新宮町)、勝島(かつしま)(宗像市神湊)、地島(じのしま)(宗像市地島)、大島(宗像市大島)など玄界灘に浮かぶ島々が描かれています。
 海の中道の西端に位置する志賀島(しかのしま)(東区大字勝馬・志賀島)から西に玄界島(げんかいじま)(西区大字玄界島)、能古島(のこのしま)(西区能古)など博多湾内の諸島が描かれ、最後は糸島半島にそびえ、筑紫富士とも呼ばれる可也山(かやさん)(糸島市志摩)で締めくくられています。  このように「福岡図巻」は、鳥飼八幡宮をスタート地点として、博多湾沿岸の地域を反時計回りに廻って糸島半島に至る範囲を、海側から鳥瞰して描いていることがわかります。

3、どんな風景を描いているか
 最後に「福岡図巻」に描かれた風景について見ていきましょう。まず、挙げられるのは、福岡城の外観が描かれている点です。城内の櫓だけでなく、黒門をはじめとする城下の門や荒戸の波戸などの防御施設まで、福岡城の外観を描いた数少ない作例で、往時の福岡城の姿がしのばれます。
 福岡や博多には簡略的ながら町家が立ち並ぶ様子が描かれ、代表的な神社や寺院も描かれています。例えば、東取入口門の脇に天神の地名の由来となった水鏡天満宮(すいきょうてんまんぐう)(中央区天神)、博多部では日本で最初に創建された禅寺として知られる聖福寺(しょうふくじ)(博多区御供所)や聖一国師(しょういちこくし)が開いた承天寺(じょうてんじ)(博多区博多駅前)、千代の松原には黒田家の菩提寺の崇福寺(そうふくじ)(博多区千代)が描かれています。
 櫛田神社(くしだじんじゃ)(博多区上川端町)の周辺には6本の山笠が見え、博多の町に夏の訪れを告げる祭礼・博多祇園山笠の様子が描かれています。また、秋の風物詩である筥崎宮の祭礼・放生会(ほうじょうや)については、博多から舟に乗って箱崎へ向かう人々や、松原で幕出しと呼ばれる酒宴を楽しむ人々の姿などが詳細に描かれています。
 このように「福岡図巻」は特定の季節ではなく、年中行事を織り込んだ福岡・博多の四季折々の風景を描いているのです。
(髙山英朗)

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