平成25年12月10日(火)~平成26年2月9日(日)
はじめに
写真がまだ無かった前近代には人物の姿を残すために数多くの肖像画が作られました。今回は福岡藩(ふくおかはん)にゆかりの肖像画を中心に、描かれる意味やタイミング、画像から読み取れるメッセージ、人物の経歴を記した賛(さん)などに注目して、江戸時代の人々が肖像画に込めた思いを読み解いてみたいと思います。
1、故人をしのぶ
肖像画を描く一番の目的は、亡くなった人物の姿や功績を後世に伝えることにあります。菩提(ぼだい)寺で行われる法要では祭壇に肖像画が掛けられ、ゆかりのある人々によって故人の人柄や業績が再確認されました。
肖像画1 黒田長政(くろだながまさ)像(館蔵)
福岡藩初代藩主を描いた肖像ですが、よく知られた一ノ谷形兜(いちのたになりかぶと)ではなく、大水牛脇立兜(だいすいぎゅうわきだてかぶと)をかぶった姿です。製作した時期は文政(ぶんせい)5(1822)年。この年は長政の200年忌にあたっており、領内あげて様々な記念行事が行われました。
肖像画2 黒田一成(くろだかずなり)像(館蔵)
黒田二十四騎の一人で福岡藩筆頭家老となる三奈木(みなぎ)黒田家初代当主の一成を描いた肖像です。手前に座るのは殉死(じゅんし)した二人の家臣です。文化(ぶんか)2(1805)年、一成の150年忌にあたって、九代当主の一定(かずさだ)が古い肖像画を元に模作させたものです。
肖像画3 青柳種信(あおやぎたねのぶ)像(館蔵)
江戸後期に活躍した国学者の姿を昭和9(1934)年に描いた肖像です。同年は種信の百年忌にあたっており、様々な顕彰事業が行われました。衣笠守由(きぬがさもりよし)という黒田家の御用絵師が描いた元図を永倉江村人(ながくらこうそんじん)という画家が写したものです。
肖像画1 黒田長政像(館蔵) |
肖像画2 黒田一成像(館蔵) |
肖像画3 青柳種信像(館蔵) |