展示・企画展示室2

No.439

企画展示室2(黒田記念室)

家臣とくらし

平成26年10月15日(水)~12月14日(日)

家臣の余暇の過ごし方の一例(№53)
家臣の余暇の過ごし方の一例(№53)

はじめに
 かつて「筑前国(ちくぜんのくに)」とよばれた福岡県の西北部は、慶長(けいちょう)5(1600)年から270年近くにわたり、福岡藩主黒田家によって統治されていました。一般的に「筑前五十二万石(ごく)」と称されるように、福岡藩は全国的にみても規模の大きな藩です。黒田家に仕えた家臣の数も19世紀の段階で6000人前後がいたとされています。彼らの多くは福岡城下で生活し、武士として日々鍛錬を積む一方で、行政官としての役割も担わされていました。また、その立場は数千石の知行地(ちぎょうち)を与えられ城内に屋敷を構える家老(かろう)クラスから、俸禄米(ほうろくまい)を支給され長屋(ながや)暮らしをしているような足軽(あしがる)クラスまで様々でした。彼らはどのような仕事をし、そして、どのような日常生活を送っていたのでしょうか?本展では、家臣が残した日記や彼らが使った生活道具を通じてその実態に迫りたいと思います。

一、家臣の多様性
 黒田家の家臣団はいくつかの枠組みによって区分されていました。具体的には、いつから黒田家に仕えているのか、武士身分の世襲を保障されているかどうか、家格はどうか、藩主への謁見が許されているかどうか、知行地を与えられるかどうかといった基準が存在し、細かくその立場が区別されていました。
 また、家臣の中には「家業(かぎょう)」と呼ばれる専門技術者の集団も存在していました。

『藩史大事典 第7巻 九州編』(雄山閣出版、1988年)18~19頁に収録された表から作成

二、家臣の仕事
 黒田家の家臣団は備(そなえ)・組(くみ)といった軍団に編成され、幕府(ばくふ)から命じられた長崎警備や、領内の警備などの「番方(ばんかた)」と呼ばれる軍事的な仕事に就く一方で、「役方(やくかた)」と呼ばれる行政官としての役職に就く者もおり、財政、町政、農政などの分野で活躍しました。家臣らは家格に応じて役職に就くのが一般的でしたが、有能な家臣が家格に縛られずに活躍できるような仕組みもありました。
 彼らは日々の業務をこなしながら多くの日記を残しています。展示で紹介しているのは、藩政を統括した「家老(かろう)」、藩主の生活などの奥向きの仕事のまとめ役である「御納戸頭(おなんどがしら)」、家臣を監視する役目である「大目付(おおめつけ)」の日記です。いずれも天保(てんぽう)4(1833)年に書かれたものなので、役職による記録の残し方の違いや、情報伝達の様子などがよく分かり、家臣の仕事の実態が見えてきます。

三、家臣の日常
 黒田家の家臣の多くは福岡城下に屋敷を拝領(はいりょう)し、家族らと共に生活していました。家臣の暮らしの様子は記録には残りにくいのですが、数少ない日常生活の覚え書きや屋敷で使った道具類からは彼らの生活臭を少しばかり感じ取ることが出来ます。
 たとえば、鎌田(かまた)家(大組(おおぐみ))の記録には家族で行う年中行事の決まり事の他に、家訓的な内容や醤油や味噌のレシピなども記載されており、暮らしの役に立つ情報が満載です。また、桐山(きりやま)家(馬廻組(うままわりぐみ))の屋敷図からは来訪者から見えない場所で野菜を栽培していた様子が分かり、生活の工夫がうかがえます。さらに、斉藤家(中老(ちゅうろう))に伝来した和時計からは、時間を気にしながら生活するようになった江戸時代後期の上級武士の生活が見えてきて興味深いです。

四、家臣の余暇
 江戸時代の武士の勤務時間は、現在と比べれば短く感じられます。公私の区別が現代ほど明確ではないので評価は難しいところですが、福岡藩の場合、基本的に隔日出勤で、しかも、朝9時に出て午後1時には帰宅することができるというものでした。したがって、家臣は仕事以外の時間で様々な余暇の活動を楽しみ、教養を深めることができました。家臣同士で漢詩集を発行する者、茶道や華道の腕前を磨く者、書画の得意な医者、根付(ねつ)け作りで藩主に認められる者等々、「自分磨き」に勤しむ家臣が数多く存在していました。
 また、参勤交代(さんきんこうたい)で江戸と国元を往復していた家臣の中には空き時間を使って各地の神社仏閣を巡ったり、盛り場に出かけたり、羽を伸ばす者もいました。時に羽目を外して上司から注意される者もいましたが、それは、「常在戦場」という言葉に象徴されるように、日常的に緊張を強いられている武士という立場ゆえの行動だったのかもしれません。

おわりに
 本展は『新修福岡市史 資料編 近世2 家臣とくらし』(福岡市史編集委員会編、福岡市発行、2014年)の刊行を記念して開催したものです。展示されている古文書のいくつかは、同書の中で活字化されています。本展と併せてご覧いただけましたら幸いです。
(宮野弘樹)

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