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No.470

企画展示室3

発掘された「いのり」のカタチ

平成28年4月26日(火)~平成28年7月3日(日)

銅製の十一面観音像

銅製の十一面観音像

 先史時代から現在にいたるまで、長い歴史をもつ福岡。そこに暮らした人々は日々の生活の中で、様々な対象に「いのり」を捧げていました。
 人々が「いのり」の対象としたものは、雄々しい自然や多様な宗教観にもとづいた偶像であったりと、時代や場面によって様々なカタチを採っていたことがわかります。このような信仰の対象は、時として具体的な造形物として作り出されました。これらは日々の暮らしを見守るものであったり、特別なときに使われたりするものもありました。
 本展示では、縄文時代の土偶から室町時代の仏像まで、福岡市内の発掘調査で出土した様々な「いのり」のカタチとそれに関連する資料を紹介します。


 四季折々の豊かな自然に囲まれ、そこからもたらされる収穫物により暮らしを支えていた縄文時代では、人々は雄々しい自然を祈りの対象としていました。目には見えない存在によって引き起こされる天変地異は、直接的に自然と共生していた縄文時代の人々の暮らしに大きな影響を及ぼしました。気候の変異は人口の増減にも大きく影響し、生活する場所も気候にあわせて変化していきます。
 縄文時代の「いのり」のカタチの代表としては、土偶がよく知られています。福岡市内で発見されている土偶は、よく知られている遮光器土偶(しゃこうきどぐう)のように装飾された土偶ではなく、シンプルな造形の土偶です。土偶とは概ね妊婦を模して作られたものが多いことから、豊穣(ほうじょう)や繁栄を司る地母神信仰(ぢぼしんしんこう)に基づいた呪物であると考えられています。形には地域差がありますが、縄文時代後期にはほぼ全国的に見られるようになるため、列島を通した「いのり」が普及していたことが分かります。
 土偶とは別に縄文時代の「いのり」を示す資料として、日常で使用される土器を転用した埋設土器(まいせつどき)があります。埋設土器は、幼児などを埋葬するために使用された土器の棺であり、使用される深鉢は底部付近に穴が空けられています。これは、棺内に葬られる夭折(ようせつ)した幼子の魂が母なる台地に還り、再び生を受けるための道であったとも考えられています。いずれにせよ、日常使用される土器に穴を空けることは、「生者」の器から「そうではない存在」の使用する器へと変化させる手続きであり、そこには「いのり」が存在していました。


 弥生時代の「いのり」は、稲作が導入され生活基盤や生業が変化したことに大きく影響を受けているようです。縄文時代の土偶のように特別な「カタチ」として造形されることは少なくなりましたが、日常使用する土器や道具類に「いのり」が込められていたと考えられます。
 丹塗土器は、その器面をベンガラで飾り立てられ、祭祀に関わる特別な「器」として使用されました。そして壷には穀物が納められ、五穀豊穣(ごこくほうじょう)のいのりがここに始まったと考えられています。縄文時代と同様、「いのり」の主な対象は、自然などの人を超越した存在であったようですが、弥生時代には祖先崇拝(そせんすうはい)も加わったと考えられます。水田経営のための数世代に及ぶ集団による定住生活を円滑にするため、過去の優れた指導者や祖先を信仰の対象にまで昇華させた結果だとも考えられます。
 また、土で造形された動物形土製品や土器に線刻で描かれた人や動物の姿は何かしらの「いのり」が込められています。戦いや秋の豊穣の線刻、多産の象徴としての動物形土製品などは、弥生時代を生きた人々が抱えていた日々の思いを具体化させた姿だったといえます。

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9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
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