平成28年8月9日(火)~平成28年10月10日(月・祝)
吉原郭図屏風(部分)
●吉原郭図屏風(よしわらくるわずびょうぶ) 紙本着色 江戸時代
お豆腐、二丁、お届けにあがりました!
江戸の吉原は、なんて、にぎやかなんだろう。ここは、連なる遊郭(ゆうかく)が描かれた絵巻(えまき)が貼り込まれた屏風の中。ここには、遊びに来た人だけじゃなく、働いている人もたくさん登場するよ。
こちらは、ずいぶん、大きな調理場だ。たくさんの焼き物や漆(うるし)の器が並んで、料理が盛りつけられるのを待っている。ぼくもお手伝いしよう。摺(す)りこぎを持つおじさんの前で、鉢(はち)をおさえてあげようかな。盥(たらい)の水で蛸(たこ)を洗うのを手伝ってあげようかな。それとも、おこぼれを待っている犬と遊んで来ようかな。
吉原郭図屏風
吉原郭図屏風(部分)
月見猩々図
●月見猩々図(つきみしょうじょうず)
耳鳥斎(にちょうさい) 絵本 絵本墨画淡彩 江戸時代
菊が香る秋の夜は、ほんとうに気持ちがいい。あそこでお酒を飲んでいる赤く長い髪の方は、きっと猩々さんだ。猩々は、もともとは中国の伝説に登場するお酒の精霊。この国では、能の演目を通じて親しまれているよ。金山(きんざん)のふもと、瀋陽(しんよう)の江(こう)(大きい川)のほとり、楊子(ようす)の里に住む男が、夢のお告げを得て、お酒を売り始めると、たくさんのお客が来てくれるようになった。そのお客の中に、子どものような姿ながら、大酒を飲む不思議な常連がいた。あるとき素性(すじょう)を尋ねてみたら、なんと、海に棲む妖精だと言うんだ。そこで、男はある晩、酒を用意して水辺で彼を待つことにした。猩々は、男の前にあらわれ、舞を舞いながらお酒の効用を謡い、いくら汲(く)んでも酒の尽きない不思議な壺を授けてくれたんだ。
能の舞台に登場するときは赤い頭(かしら)をつけ、赤い面(おもて)に赤い装束(しょうぞく)につける赤尽くしの姿。なんとも華やかで、おめでたい姿として、江戸時代の絵画にもよく登場するんだよ。
ところで、猩々のお酒は、寿命(じゅみょう)を延ばす不思議なお酒。人間がこの世で飲むお酒は、飲み過ぎ厳禁。お酒で不幸にならないでね。豆腐小僧のお願いだよ。
妖怪・豆腐小僧の「食めぐり」は、いかがでしたか?お豆腐と日本美術の楽しさをお届けに、明日はあなたのもとを訪れるかもしれません。
杉山未菜子