展示・体験学習室

No.436

企画展示室1

博物館もよりの砂丘遺跡-西新町・藤崎遺跡-

平成26年9月30日(火)~11月30日(日)

ガラス製トンボ玉(弥生時代中期)
ガラス製トンボ玉(弥生時代中期)

はじめに
  博物館もよりの西新・藤崎には3000年位前から砂丘が形成されており、人々が暮らしていました。
 古くから弥生土器や三角縁神獣鏡などの発見があって、学史的にも注目されてきた遺跡ですが、今から約40年前の昭和50年代以降の市営地下鉄や藤崎バスターミナルの建設、県立修猷館高校の建て替え工事などにともなって発掘調査が進み、弥生時代から古墳時代前期を中心とする集落や墳墓の全容が明らかになってきました。
 弥生時代といえば、稲作農耕文化のイメージですが、西新町・藤崎遺跡群は農耕不適地に立地しており、出土遺物などからも、漁村的な遺跡であったと考えられます。また、中国や朝鮮半島など遠隔地からもたらされた遺物も多く出土することから、漁撈とともに海を介した対外交易などをも担った集団が暮らした遺跡と考えられます。

遺跡の発見
  明治45(1912)年、藤崎遺跡の第1地点と呼ばれる個人住宅地内で、土砂採取中に石棺が発見され、人骨にともなって三角縁盤龍鏡(さんかくぶちばんりゅうきょう)と環頭大刀(かんとうたち)が出土しました。発見地周辺は後年、福岡市教育委員会が発掘調査(藤崎遺跡第32次調査)しており、古墳の埋葬にともなうものであることが明らかになっています。近くの第2地点でも大正6(1917)年に箱式石棺がみつかっており、方格規矩渦文鏡(ほうかくきくかもんきょう)が出土しています。同所では昭和5(1930)年の地下げ工事中に甕棺や石棺が多数みつかっており、甕棺に副葬されていたという弥生時代前期の壺が出土しています。こちらの周辺も後年、藤崎遺跡第27次調査などが行われており、弥生時代から古墳時代の墳墓群が分布することが明らかになっています。現在では、遺跡がほとんど遺存していないと考えられる藤崎遺跡の北部、第3地点と呼ばれる旧藤崎刑務所周辺でも甕棺片や弥生土器などが採集されており、「西新式」土器と呼ばれる弥生時代終わり頃の標識資料も出土しています。
 戦前に発見されたこれらの出土品は現在、東京国立博物館(第1地点)、九州大学考古学研究室(第2地点)、九州大学総合博物館(第3地点)が所蔵しています。発掘調査が本格化する昭和50年以前は遺跡の重要性を語る貴重な資料であるだけでなく、弥生時代や古墳時代の考古学研究においても基準資料と位置づけられるものが少なくありませんでした。

砂丘の形成と開拓者の墓
 発掘調査は市営地下鉄の建設工事にともなう福岡市教育委員会主体の調査から本格化します。これまで西新町遺跡で22次(うち修猷館高校内の8地点は福岡県教育委員会が調査主体)、藤崎遺跡で37次の調査が行われてきました。
 遺跡の大部分は博多湾に面する砂丘上に立地します。砂丘は東を樋井川(中世以前の河口は現在よりも東で、古・鳥飼湾があった大濠周辺)、西を金屑川で画され、南側は高取山や麁原山(そはらやま)から北に派生する第三紀丘陵に接します。地質学で「箱崎砂層」と呼ばれる堆積層を基盤とします。博多湾沿岸で一連的に形成された砂丘の一部であり、西新町遺跡と藤崎遺跡の間には浅い谷がありました。博物館周辺は「よかトピア」の頃に埋め立てられた土地です。鎌倉時代の海岸線に築かれた元寇防塁が西南学院大学敷地内の南部で発掘されているなど、中世以前の海外線は現在より1キロメートル以上も南でした。
 砂丘の形成は縄文海進のピークが過ぎた約3000年前(縄文時代後・晩期に相当)からはじまると考えられますが、形成前の遺物が西新町遺跡南部の18次調査などでみつかっています。縄文時代前期の轟(とどろき)B式や曽畑(そばた)式の土器や黒曜石石器が約7000年前の火山灰を含む砂層から出土しています。第三紀丘陵の北端に立地する縄文時代遺跡と考えられます。しかし、砂丘の形成過程にある縄文時代後半期には人々が暮らした形跡は認められません。
 今から2500年以上前の弥生時代早期(夜臼(ゆうす)式土器段階)になると、藤崎遺跡の西部で墓地が形成されはじめます。甕棺墓を主体とする墓域が中期をピークに東、北へと広がります。弥生時代早期から前期は木棺や大きい壺棺(甕棺)を埋葬主体とし、壺が副葬(供献)されるものが少なくありません。2次調査や32次調査では翡翠(ひすい)製勾玉や碧玉製管玉などの副葬品をもつ甕棺もみつかっています。一方、西新町から藤崎の砂丘上に弥生時代前期の集落は形成されていません。早良平野の沖積微高地や台地上に当該期の農耕集落が多数あるので、平野開拓者の墓が藤崎の砂丘上にも営まれた可能性が考えられます。

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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2023年7月22日~8月26日の金・土・日・祝日と8月14日・15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2023年8月14日・15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

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