平成30年12月18日(火)~平成31年4月7日(日)
空吹窯を掘る
(博多遺跡群213次)
はじめに
遺跡の発掘調査からは、過去に生きた人々の生活の様子や当時の社会情勢などの様々な情報を得ることができます。今回で9回目を迎える「ふくおか発掘図鑑」では、発掘調査が終了したばかりの資料や、近年刊行された発掘調査報告書に掲載されている資料を中心に紹介します。
縄文時代の調査
(元岡・桑原遺跡群52次)
ふくおか発掘事始(ことはじ)め
ふくおかでの遺跡や遺物の発見に関する記録は江戸時代までさかのぼります。その後、研究者による発掘調査や論文発表が行われた明治・大正時代から昭和のはじめを経て、高度経済成長期には盛んな開発に伴い、遺跡の保存や調査が急務となりました。1967年の有田(ありた)遺跡群の調査は、福岡市が九州大学へ調査を依頼する形でしたが、福岡市の埋蔵文化財への取組みの第一歩となりました。
それから約50年。これまでに2500件を超える発掘調査が行われ、1357冊の発掘調査報告書が刊行されています。ほとんどの遺跡は発掘調査後に失われてしまいますが、その代わりに発掘調査報告書という形で記録保存が図られています。
ふくおかのJOMON
福岡市西区にある元岡(もとおか)・桑原(くわばら)遺跡群では、九州大学伊都キャンパス移転事業に伴いこれまでに66次にわたる発掘調査が実施されてきました。今回紹介する52次調査では、ふくおかの縄文時代の中でも最も古い遺物が出土しました。縄文時代のはじめのころ、草創期(そうそうき)と呼ばれる時期に作られた土器は長い間土の中に埋まっていたため、大変もろくなっています。見つかるほとんどが小さな破片ですが、ひとつひとつの破片をじっくり見てみると、文様を作り出した形跡や、製作時に付いたと考えられるかすかな工具痕が残っていることが確認できます。
土器の形や文様は、同じ縄文時代のなかでも時期によって少しずつ変化していきます。縄文土器といってみなさんが想像する、多様な装飾を持つ土器はもう少し後の時期になって出現します。はじめのころは、無文(むもん)のものや、かすかな隆起線文(りゅうきせんもん)をもつ土器が作られていました。