平成6年10月18日(火)~12月4日(日)
呪符木簡(博多遺跡・原遺跡) |
土馬(春日氏向谷南遺跡) |
はらい
現に身に降りかかっている災いや、これから遭遇するかもしれない不幸から逃れ安楽を求めるためにおこなわれるものです。(病気はらい、魔除け、安楽のはらい)
”はらい”に用いる道具には、人形(ひとがた)・舟形・馬形などの形代の他、絵馬・人面墨書土器・呪符・暦などがあり、遊びと化したものには羽子板・木トンボ・独楽回し・毬杖・印地(いんじ)打ち・弦打ちなどがあります。
のろい
他人の運命を動かそうとするものです。特定個人に向けられる呪術行為で、他人に不幸をもたらすことを目的とすることが多く、丑(うし)の刻(こく)参りは、その典型の行為です。奈良・平安時代は死刑に相当する重罪でした。「夫婦和合祭文」・「夫婦離別祭文」や目や胸にくぎを打たれた”のろい”の人形などがあります。
土馬・馬形
馬は水神信仰と漢神信仰の両方にかかわっており、一方では降雨・止雨の祈願をもとにした水神の鎮めとして、他方では行疫神を主体にした漢神のはらいとして用いられました。後には絵馬として祈願に使われるようになりました。
呪符
仏教と陰陽道や道教などの習合したもので、「物忌」・「病気払い」・「鬼除け」・「疫病除け」・「災い除け」・「延命」・「止雨乞い」など目的とします。民俗の中でも現在も使用されている各種の魔除け用のつるし物(ハリセンボン・アワビ・ホネガイ)も、広い意味での呪符とみなせます。
人面墨書土器
恐ろしい流行病は西の胡(こ)国から来ると考えられていました。外国から来る鬼の顔を描いた壺に災いや穢(けが)れ、病の気を吹き込み、これらを封じて祓い去るために川などへ流しました。
人形(ひとかた)
人形は人の形代、我が身であり、愛しい人、憎い人の身代りでした。人形に罪や穢れ、病気を移し川に流しました。
「一撫一物」。人形で我が身を一撫(ひとなで)し、続いて人形に息を吻きかけて身中の病気を人形に移し祓い流しました。
地蔵と閻羅(えんら)王(閻魔王)
お地蔵さまと呼んでいる地蔵菩薩は釈迦の死後、56億7千万年の将来、弥勒菩薩がこの世を救うために現われるまでの間、末法の世の人々の救済をゆだねられたとされ、六道(地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道)を巡って人々を救う仏です。『日本霊異記』では、閻魔王が地蔵菩薩と同体であるとしています。
六道銭
俗に三途の川の渡し賃といわれ、六道思想と関わっています。平安時代から浄土教信仰が盛んになると、地獄草子などの六道絵の普及に伴って銭貨を棺や骨壺にいれることが広まり、室町時代後半には民衆の間でもおこなわれました。
民俗資料から
▼馬に乗せる祈り
藁馬は日本各地でさまざまな行事に登場します。いずれも神の乗り物とされ、その去来を知る大切なしるしとなりました。
絵馬は神に願いごとをする時によく使われるなじみ深いものですが、その起こりは生きた神馬の代わりに板で作った馬を奉納したところにあるといわれます。
▼猿に託す祈り
猿を馬の守り神とみる信仰は東アジアに広くみられます。日本でもかつては厩(うまや)に猿をつなぐ習俗がありました。
家の戸口にかかる猿面は疱瘡(ほうそう)よけのまじないになっています。疱瘡は赤い発疹が特徴なので、すでに尻の赤い猿を掲げ、疱瘡神に引き取ってもらおうというものです。
▼魔除けの呪物
魔除けにはさまざまな種類がありますが、外から来る災厄に対しては、それを防ぎ、跳ね返すものがよく選ばれます。
いっぽう、すでにわが身にかかった災厄は、それを外部に送り出したり、神として祀り上げてしまうまじないがおこなわれます。