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No.301

考古・民俗展示室

ふくおか民俗カタログ2-ウシサマ-

平成19年6月19日(火)~平成19年9月2日(日)

二、収穫祭の日取りとその特徴
  ではここで、視点をぐっと上空へ引き上げてみることにしましょう。
  左に掲げたのは、稲の収穫祭を行う日取りが、福岡県内でどのような分布を示すかを地図にしたものです(草場の事例を除き『福岡県史』民俗資料編の情報を使用、傍線引用者)。□は亥(い)の子(こ)、●○は丑の日、▲△は社日(しゃにち)を示しています。
  □の亥の子は、旧暦10月の亥の日に行われる行事で、たいてい最初の亥の日ですが、二番亥の子などといって2回目に回ってきた亥の日に行事を行うこともあります。



ウシサマを祭る(飯氏)

 (1)北九州市戸畑(とばた)区天籟寺(てんらいじ)では、月遅れの11月が亥の子で、この日は「1月11日に出た田の神(年徳神(としとくじん))が田仕事を終え、それぞれ家に帰る日とされ、1升枡の中に大おはぎ餅1重ねを入れ荒神棚に供え」ました。
 (2)行橋(ゆくはし)市今井(いまい)では「旧暦10月亥の日に、田の神として稲刈の時に田に刈り残した3株の稲を刈取って家に持ち帰り、臼の上に編俵(あみだわら)を敷いてまつる。神酒・魚・什(鯔(ぼら))の煮しめと豆腐汁その他を供えて、田の神に豊作を感謝する。昔は臼の上にそなえていたが、今は神棚の前にかざる」といいます。
●○の丑の日は、先に紹介したとおり、旧暦11月の丑の日のことです。亥の子と同じように最初の丑を祭りの日としますが、2番目でもよいとされます。この日に対応する行事が、旧暦2月の丑の日にあることも多く、地図ではのいずれにも祭りを行うところを●で、秋にだけ行うところを○で示しています。
 (3)宗像(むなかた)市平等寺(びょうどうじ)では、春秋ともに祭りを行いました。2月は「ニワに新しいムシロを敷いて臼を置き、その上に箕をのせる。開いた方を外に向ける。お鏡餅を搗いて1升枡に入れ、おなます・神酒・灯明とともに箕の上に供える。『丑様が作をしに下って来らっしゃる』といって内の方を向いて拝む。夜やすむ時に供えものは臼の中にしまう(夕方の行事)。前日の子(ね)の日から同様の行事をする」といい、11月は「ニワに新しいムシロを敷き、臼を置き、その上に箕の開いた方を内に向けてのせる。餅をつき1升枡にあふれるほど入れ、おなます・神酒・燈明とともに箕の上に供える。その時、台所の包丁・火吹き竹・十能(じゅうのう)・火箸(ひばし)などはショウケに入れて外に出しておく。作がよかったり悪かったりすると、荒神様と作神様の計算が合わないといって争いをさっしゃるので、道具は外にだしておく」と伝えています。
 (4)福岡市西区草場は、旧暦11月にだけ《丑様(ウシサマ)》を行いますが、春秋に対応する祭りがないわけではなく、先述の通り、荒神様が「行かっしゃあ」のが二月の丑の日から午の日へと置き換わった結果ではないかと考えることができるでしょう。これは福岡県西部の糸島地方一帯にいえることで、地図に示した○には、このように2月の祭りの日取りが変化したものと、祭りそのものがなくなり、忘れられたものとが含まれています。
▲△の社日は本来、春分・秋分に最も近い戊(つちのえ)の日のことで、丑の日と同じように、春と秋に対応する行事が行われます。地図では、▲を春秋どちらも祭りを行うところ、△はどちらか片方だけ行うところとしています。
 (5)八女(やめ)郡上陽(じょうよう)町久木原(くきはら)(現、八女市)では社日さんは「作の神様である」といいます。「旧の3月と9月の14日に祀る。サクマツリ(作祭り)という。3月にやってきて9月に帰るという。9月の作祭りには、芋まんじゅう・牡丹餅(ぼたもち)などを臼の上に置く。但し、きな粉はさける。社日さんが炒り物が嫌いだからだ。炒り物は作物が焼けることも意味する。この日の土がかりをしない」といいます。
 (6)大川市鬼古賀(おにこが)でも「社日さんを作神として」います。「正月に木版刷(もくはんず)りの社日さん(衣冠束帯(いかんそくたい)で稲束を担いでいる姿の像)のお札が各農家に配られ、神棚やセコ(籾箱(もにばこ))に貼付ける」ほか、春の社日になると「農家では床の間に社日さんをまつり、三方台(さんぽうだい)の中央に大きなボタ餅を並べて供える。また、膳に鮒(ふな)の尾頭付(おかしらつ)き・煮付け・なますなどを供え、灯明をあげ、トキワ(榊(さかき))を立てて礼拝し、豊作を祈願する」といいます。秋の社日も「収穫感謝で餅を供え、春と同様に尾頭付きなどを添え」るものでした。

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