平成26年5月27日(火)~7月21日(月・祝)
(3)土人形と疱瘡(ほうそう)除け
笹野才蔵(ささのさいぞう)は、福岡地方の郷土玩具として、数多くの郷土玩具の書籍に紹介されている土人形です。御幣(ごへい)をもった猿を連れている若衆姿で表されています。
かつて博多では、疱瘡(天然痘(てんねんとう))から逃れられるとして、笹野才蔵の土人形を飾るほか、「笹野才蔵」とかかれた札を玄関口に貼っておくという風習がありました。これは、才蔵が疱瘡をもたらす疱瘡神を切り捨てたため、疱瘡神が才蔵を恐れて寄りつかなくなったという伝承によるものです。また、才蔵が山王(さんのう)の猿を連れていることから、同じように猿にも疱瘡除けの力があるとされ、信仰の対象になっていました。
早良区藤崎(さわらくふじさき)にある猿田彦(さるたひこ)神社の授与品「猿面」は、「疱瘡除けに赤物が効く」と「猿の赤顔」という連想による俗信の一例です。猿面には、ほかにも災難除け、「猿は木から落ちないので、受験に成功する」、「疱瘡(天然痘)の痘と盗難の盗といった言葉をかけて盗難除け」などの言葉遊びによる猿の効が語られています。
英彦山がらがら |
2.土鈴―授与品と土産(みやげ)物
江戸時代、土人形とともにつくられるようになった土鈴は、本来の魔除けとしての意味に加え、土産物として求められることが多くなります。昭和時代には、土鈴ブームも起こり、土鈴にならない郷土玩具はないといわれるほど、多種多様な土鈴がつくられ、熱心な郷土玩具収集家の手に収められていきました。
福岡県の代表的な土鈴として、田川郡添田(そえだ)町の英彦山(ひこさん)神宮の授与品「英彦山がらがら」があります。起源は諸説ありますが、彦山権現勧請(ひこさんごんげんかんじょう)の際に上宮(じょうぐう)の土中から出てきたといわれています。素焼きの鈴に朱と群青(ぐんじょう)で彩色を施し、藁(わら)で5~10個を一括りにしたものです。英彦山周辺では、稲に虫がつかないよう、これを苗代の水口に埋めたり、家の玄関口や神棚に吊して魔除けとしたりしています。
このほかにも、福岡をはじめ全国で、社寺の授与品のほかに地域の文化資源を全面的に出した観光土産としての土鈴が数多くつくられています。
右より梟笛・鳩笛・鷽笛 |
3.土笛―遊びと健康
土笛は、吹くと「ホーホー」という音が出ることから、鳥や犬などの動物がかたどられることが多いようです。県内では、神社の伝承や神事に関わりの深い鳩(はと)笛、梟(ふくろう)笛、鷽(うそ)笛のほか、変わったものとしては、兵隊笛などもつくられています。
土笛は、玩具であるだけでなく、幼児・老人の喉(のど)詰まりや、子どもの虫封じに効く縁起物としても求められました。また、郷土玩具の世界では、これらを並べて地域ごとの色彩や形の違いを楽しむことに重きを置いて、全国各地の土笛を収集していました。
(河口綾香)