平成26年7月23日(水)~9月28日(日) 企画展示室1(7月29日~)・企画展示室4(7月23日~)
日本シリーズ優勝パレード 「野球界」(1957年12月号) |
優勝パレードの三原監督 「野球界」(1957年12月号) |
子どもと「おまけ」
子どもの「おまけ」の発端は、周知の通り、売上増加を企画した江崎グリコのアイデアと工夫に求められます。大正11年(1922)に試験的な絵カードの挿入にはじまり、5年後の昭和2年(1927)から本格的な「おまけ」の封入がはじまったとされています。
子ども向けの「おまけ」、とりわけキャラメルやチョコレートなど小さな菓子類につけられた玩具たちは、それなりの意味をもっていて、子どもらの好奇心の対象でもありました。
おまけ史にその名も高いカバヤキャラメルの「カバヤ文庫」や、紅梅キャラメルの「野球カード」など、その典型例といえるのですが、貧しい時代の子どもらにとって、「本」はこの上ない喜びの源泉だったろうし、戦後スポーツの花形として「巨人軍チーム」は少年たちの憧れの的であり、かつ、カード集めの結果としての野球用品は、彼らの欲望を痛いほどに刺激し続けました。ちなみに、西鉄ライオンズの選手も仁丹ガムの野球選手カードに登場するようになります。一流出版社による本格的児童書は高嶺の花、野球用品は手の出ない値段というこの時代に、それらは、子どもらにとって不要であるどころか、何者にも勝る有用性を誇示していたのではないでしょうか。つまり、「おまけ」が、役に立たないミニチュアや目を楽しませるだけの絵カードなどではなく、明らかに有用な本や野球道具であったといっても過言ではないでしょう。
(鳥巣京一)
[企画・写真協力]
- 西日本鉄道株式会社
- 西鉄ライオンズOB会
- 久保田運動具店福岡支店
- NPO西鉄ライオンズ研究会
[協力]
- 中西太 坂上惇 久保山誠 西村貞朗 高倉照幸 豊田泰光 滝内弥瑞生 畑隆幸 村山泰延 安部和春 今泉京子
和田貴美子 河野鈴子 吉富実 宮崎俊朗 江頭重利 豊田泰由 内山純男 田北昌史 松永一成 土屋和之
(主要参考文献)
- 小野博人 『ああ西鉄ライオンズ』 (西日本新聞社 1983年)
- 河村英文 『西鉄ライオンズ 最強軍団の内幕』 (葦書房 1978年)
- 豊田泰光 『豊田泰光 108の遺言』 (ベースボール・マガジン社、2013年)
- 豊田泰光 『「まぐれ」と「極意」』 (日経BP社、2009年)
- 中西太 『西鉄ライオンズ最強の哲学』 (ベースボールマガジン社 2007年)
- 林健太郎監修 『実録昭和史 激動の軌跡』4 (ぎょうせい、1987年)
- 毎日新聞社 『決定版 昭和史』 (第14巻 第15巻 1984年)
- 益田啓一郎編 『西鉄ライオンズとその時代』 (海鳥社、2009年)
- 『野球界』 (1950―1960年発行の各号)
- 『ベースボールマガジン』 (1952―1960年 発行の各号)