展示・体験学習室

No.435

企画展示室2

御用絵師の世界

平成26年8月19日(火)~10月13日(月・祝)

図版③『暁斎画談』部分
図版③『暁斎画談』部分
図版④『暁斎画談』部分
図版④『暁斎画談』部分

狩野家一門の絵画トレーニング
 さて、もう少し、先ほどの狩野洞白の邸宅の様子を見てみましょう。画面の右上、廊下を挟んだ部屋では、羽織(はおり)姿の人物が端座し、その向かい、画面の端ギリギリのところに裃(かみしも)姿の武士が描かれています(図版①)。幕府、またはどこかの藩の御用を伝えにきたのでしょうか。
 画面の左上には、大画面の中国風の人物図を眺める人がいます(図版③)。この人は、駿河台狩野家一門の指導者的立場の人で、制作中の絵の出来映えをチェックしているのかもしれません。
 注目すべきは、火鉢を囲む人びとのやや上に描かれた子供の姿です(図版④)。右手に筆を持ち、畳に伏せるようにして、一心に作業をしています。これこそ、幕府や諸藩のお抱えになるような絵師たちが一人前になるために積んだトレーニングの様子を表すものです。彼らは、まず、お手本となる絵を何度も写して、絵を描く技を体得していきます。現在の図画工作や美術の授業のように、描く対象となる実物をスケッチすることはしません。では、お手本の写しはどうやるのでしょうか。まず、お手本を下におき、その上に軸に巻き付けた紙をおきます。そして、お手本の上で、奥→手前→奥と紙の軸を前後(巻物だったら左右)に往復するように転がし、ちらちら見えるお手本の残像を目に焼き付け、その残像をなぞるように紙の上に筆をすべらせるのです。先に見た子供は、お手本を、一生懸命、写しているところなのです。

 この展示は、福岡藩の御用絵師について紹介します。藩の御用をつとめる絵師の家系としては、先にあげた尾形家のほか、衣笠(きぬがさ)家、上田(うえだ)家、石里(いしざと)家があげられます。また、彼らとは別に、江戸の狩野家のなかでも中心的な位置にいた絵師が、請われて福岡藩の御用をつとめるようになった例もあります。今回は、福岡に深く関わった狩野家の絵師であり、河鍋暁斎よりおよそ200年前の人・狩野昌運(かのうしょううん)(1637-1702)をナビゲーターとして、御用絵師の世界を旅することといたしましょう。
(杉山未菜子)

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pressrelease

休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

Facata(博物館だより)

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