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No.441

企画展示室4

人骨が教えてくれること

平成26年12月9日(火)~平成27年2月22日(日)

博多区博多遺跡群出土火葬人骨集積状況
博多区博多遺跡群出土火葬人骨集積状況

 続く中世では引き続き土坑墓や木棺墓、火葬などの方法で埋葬が行われていました。博多遺跡群は国際貿易都市として栄えましたが、亡くなった人々は屋敷地内に葬られていたようです。出土した人骨からは遺体への改変などは見られません。副葬される品も青磁碗などが多く見られ、女性であれば生前使用していたと考えられる化粧箱などが副葬されました。中世中頃の段階になると博多からは「墓」が見られなくなります。これは都市部での埋葬が物理的に困難になったことなどの事情から、埋葬の場を都市近郊に求めた結果だと考えられますが、十五世紀代になると再び屋敷墓として埋葬される例が見られるようになります。博多で調査された「人骨」の中でも特筆すべきものとして、市営地下鉄工事の際に発見された大量の頭蓋骨群があります。

博多区博多遺跡群 木棺墓出土状況
博多区博多遺跡群 木棺墓出土状況
少なくとも110体以上の火葬された頭蓋骨が集積された状況で発掘され、ほとんどの人骨が成人男性のものでした。刀傷を受けたものが多く見られることから、斬首され火葬された後にまとめて埋葬されたものであることが分かりました。十四世紀の博多は鎮西探題(ちんぜいたんだい)襲撃をめぐる戦乱が相次いで発生しており、この戦乱のなかで敗れて処刑された武士たちの亡骸と推測されていますが、残された胴体については未だ発見されていません。

「人骨」からみる「死生観」の変化
 以上のように、福岡市内で発見された人骨資料とその埋葬方法を概観してみましたが、各時代毎に変化していく埋葬方法の背景には「死」に対する人々のとらえ方の変化や信仰などの複数の要素が複雑に絡み合い反映されているようです。現代のように、多くの方が病院で亡くなり火葬場で火葬され、遺骨が墓や納骨堂に納められる状況では、なかなか「人骨」を目にする機会はありません。しかし、「死」がもっと身近に存在していた時代では、現代人の常識では考えられないような葬法が行われていたことも分かってきています。度重なる戦乱や飢饉により遺体が死屍累々(ししるいるい)と遺棄されている状況や、死者の蘇りを恐れて遺骨を毀損することが、当時としては「習わし」であり普通のことだったのです。
 人骨に対して私たちが持っている過剰なまでの暗いイメージは、近年の現代化によって付与されたものであり、それは「負」の側面ばかり強調されています。しかし、「人骨資料」は考古学的にも形質人類学的にも大きく重要な役割を担っています。過去に生きた人々の情報が「死」によって保存され、現代に生きる私たちに過去の暮らしを生き生きと伝えてくれます。人骨は黙して語りませんが、多くのことを私たちに教えてくれているのです。(本田 浩二郎)

展示資料(時代/出土遺跡)
1 人骨(男性/熟年/縄文時代/西区桑原飛櫛貝塚)
2 人骨(女性/熟年/縄文時代/西区桑原飛櫛貝塚)
3 人骨(男性/熟年/弥生時代/博多区金隈遺跡)
4 人骨(女性/熟年/弥生時代/博多区金隈遺跡)
5 人骨(男性/熟年/弥生時代/早良区西新町遺跡)
6 人骨(男性/熟年/弥生時代/早良区西新町遺跡)
7 人骨(男性/成年/弥生時代/早良区藤崎遺跡)
8 人骨(男性/熟年/古墳時代/南区卯内尺古墳)
9 人骨(男性/成年/古墳時代/南区卯内尺古墳)
10 人骨(女性/熟年/古墳時代/南区卯内尺古墳)
11 人骨(女性/熟年/古墳時代/南区卯内尺古墳)
12 人骨(女性/熟年/中世/博多区博多遺跡群)
13 貝輪(弥生時代/博多区金隈遺跡)
14 弥生土器・甕(弥生時代/早良区西新町遺跡)
15 弥生土器・甕(弥生時代/早良区西新町遺跡)
16 化粧品箱(中世/博多区博多遺跡群)

 1・2、5・6・7の人骨資料は九州大学院比較社会文化研究院基層構造講座資料室所蔵、3・4・12は九州大学総合研究博物館所蔵、8~11・13~15は福岡市埋蔵文化財センター所蔵、16は福岡市博物館所蔵です。

 なお、今回の展示会にあたっては、関係機関並びに田中良之先生、岩永省三先生、舟橋京子先生、田尻義了先生にご協力いただきました。末筆ながら御礼申し上げます。

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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
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