愛のキセキ
平成26年12月16日(火)~平成27年2月15日(日)
福岡市は、3つのミュージアムを持っています。昭和54(1979)年に開館した大濠公園にある福岡市美術館、平成2(1990)年に開館した当館、平成11年に開館した博多リバレインにある福岡アジア美術館です。2つの館は、開館以来、特色ある資料収集・コレクション形成につとめており、それらを活用する展示を年間を通じて行っています。
さて、この冬から来春にかけ、博物館の企画展示室、美術館の古美術企画展示室、アジア美術館のアジアギャラリーにおいて、同じテーマの展示を行います。これは、3館の歴史において、はじめての試みです。テーマは「LOVE/愛」。その博物館バージョンの1つが、この「愛のキセキ」です。博物館の収蔵品が物語る「愛」のあり方を紹介します。
愛のキセキ
「ガラスの宝石箱」—これは、今から、30年以上もまえ、この福岡市博物館をどの場所にどんな建物としてつくるのかという構想の中で語られている言葉です。ふるさとの歴史やそこに暮らしてきた人びとの営みを知るうえで欠かせない「宝物」がぎっしりつまった宝箱のような博物館にしよう、という気持ちがあらわれています。博物館の「宝物」—収蔵品は、開館以来、順調に増え続け、いまや30万件以上となりました。収蔵庫は実際ぎっしりで、「宝物」の台帳である収蔵品目録は平成26年12月現在で29冊を数えます。
博物館の「宝物」の性格は、実に多彩です。地位の高い人がステイタスシンボルとして大事にしていた立派で豪華なものもあれば、市井(しせい)の暮らしを支えた身近なものもあります。時代の古いものもあれば、比較的最近までよく目にしたものも含まれます。それらは、多くの人びとの気持ちと行動を介して博物館にもたらされました。とくに、博物館の収蔵品は、市民の方々から寄贈されたものが多数を占めます。長い時間を超えて手元に伝わってきたもの、そして、世代を超えて受け継がれたものにまつわる記憶が、未来の社会と人びとの糧(かて)になるかもしれない—このような想いが、博物館の収蔵品をたいへん豊かなものにし、福岡の歴史と人びとの営みの知られざる一面に光をあてています。
「愛のキセキ」展では、過去のさまざまな出来事が「歴史」になり、過去から受け継がれたものが「文化財」となる、その過程に関わる人びとの切実な気持ちに注目します。博物館が保存し展示しているものは、「愛の軌跡」であり「愛の奇跡」なのだという実感を、みなさんと分かち合いたいと思います。