水辺の絵葉書-名所風景としての釣り人-
令和元年11月19日(火)~令和2年1月26日(日)
変化する水辺の風景
なくなりはしないまでも、多くの水辺の風景は、近代化のなかで大きくその姿を変化させました。
水辺で仕事をする人びとの姿も大きく変化しました。漁に従事する人たちの服装をはじめとする装備が大きく変化しています。
太平洋側で盛んなカツオ漁は、一本釣りというスタイルは同じですが、竿をもつ漁師の服装はまるで違います。ブリ漁も同じです。大正時代から昭和時代戦前頃の絵葉書では、半裸の漁師が働いています。
港も変化が大きい水辺の風景のひとつです。埋め立て、港湾設備の近代化、入って来る船が大型化など、変化する要素がいくつもあります。
変わらぬ水辺の風景-名所風景としての釣り人-
各地の水辺の風景は大きく変化しましたが、水辺の名所風景は、名所ゆえに変わらず保存されています。写り込んでいる舟や釣り人の服装などに時代が感じられるものの、風景そのものは今も変わらずそこにあります。
江戸時代前期の儒学者・林羅山(はやしらざん)(1583〜1657)の息子である林鵞峯(がほう)(1618〜80)が、著書『日本国事跡考(にほんこくじせきこう)』(寛永20年・1643)で、宮島(みやじま)(広島)、天橋立(あまのはしだて)(京都)と並べて「三処奇観」として以来、松島(まつしま)(宮城)は日本三景のひとつとして名高い名所です。大小の島々が湾内にちらばる様子は、「水辺の絵葉書」にはうってつけの風景です。
海外からの観光客も多い京都・嵐山(あらしやま)などは、昔も今も人気の名所で多くの絵葉書が残っています。他にも、清流で名高い川、観光地、有名な建造物など、「名所風景」には21世紀の現在眺めても、すぐそれと分かるものが少なくありません。
景勝地での釣りで多いのは鮎釣りのようです。鮎の解禁日は河川ごとに決まっていますが、夏の訪れとともに始まることに変わりはありません。鮎を狙う釣り人がいる風景は、清流が流れる名所風景であると同時に、夏の便りでもあります。
一方、九州ではなじみがありませんが、水面に厚い氷がはる地域では、氷に穴をあけての釣りは冬の風物詩です。長野・諏訪湖(すわこ)のワカサギ釣りなどが有名です。温暖化の影響か、近年は十分な厚さの氷がはらない年も多いようですが、氷上の釣りは、変わらぬ冬の名所風景のひとつです。
さて、金森氏の「釣り」絵葉書コレクションには、福岡市内の釣り風景絵葉書も一枚含まれています(左の写真)。画面奥には白壁と石垣。水面には蓮。さて、どこだか分かりますか? (太田暁子)