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No.562

企画展示室3

水への祈り

令和3年4月1日(木)~7月18日(日)

3.水に捧げる祭り
写真5 土師器〈壺・高坏・ミニチュア土器〉(高畑遺跡)
写真5 土師器〈壺・高坏・ミニチュア土器〉(高畑遺跡)

 ヤマタノオロチの神話からは、古代には洪水を治めるために川に酒を捧げる祭りがあったことも窺(うかが)えます。オロチ退治に用いられた酒は、古墳時代に生産を開始した須恵器(すえき)の大甕を用いて作られた醸造酒だったとみられます。実際に古墳時代の川や水路から須恵器の大甕が出土することがあります。

写真6 滑石製品〈子持勾玉等〉(立花寺B遺跡)
写真6 滑石製品〈子持勾玉等〉(立花寺B遺跡)

 また、古墳時代には川から大量の土器が出土する事例がみられます。特に手のひらサイズで底が丸い小型の壺、高坏(たかつき)と呼ばれる高い台が付いた盛り付け用の器、実用できない小さなサイズのミニチュア土器が目立ち、博多区高畑(たかばたけ)遺跡では一つの川から小型壺350点、高坏200点、ミニチュア土器80点ほどが出土しました(写真5)。日常的に使用する土器のセットとは異なり、川に対して酒や米などの供物を捧げた痕跡とみることができます。何らかの異常により川の水の流れが止まった段階で川岸に据え置かれた例もあり、神の怒りを鎮め、水を乞う祭祀をおこなったのでしょう。

 古墳時代の河川祭祀には、土器以外に石製品も用いられました。やわらかい滑石(かっせき)を削って作った勾玉やビーズなどは特に多く出土し、紐を通して樹枝に吊り下げるような祭祀が行われたと考えられます。博多区立花寺(りゅうげじ)B遺跡でも子持勾玉5点など、川から多くの滑石製品が出土しました(写真6)。

4.「水に流す」

 飛鳥・奈良時代には、律令国家の下で水利の技術や祭祀が整備されました。「祓(はらえ)」などの儀礼に際しては、人形(ひとがた)・馬形(うまがた)などの形代(かたしろ)や斎串(いぐし)、顔を墨書した土器などに、罪や穢(けが)れ、疫病などを込めて水に流す祭祀が行われるようになります(写真7)。清き水が持つ聖なる力にすがったのでしょう。元岡・桑原遺跡群では、奈良時代の祓に用いる物品リストが記された木簡が出土し、湧水点に近い谷で祓が行われた可能性があります(写真8)。こうした祭祀が「水に流す」という言葉の語源にもなりました。 (朝岡俊也)

写真7 木製形代〈鉾形・人形〉と斎串(下月隈C遺跡)
写真7 木製形代〈鉾形・人形〉と斎串(下月隈C遺跡)
写真8 祓に用いる物品リスト(元岡・桑原遺跡群)
写真8 祓に用いる物品リスト(元岡・桑原遺跡群)
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9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
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(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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