はかた伝統工芸館連携企画 手仕事の美と技2-曲物-
令和4年6月14日(火)~8月15日(月)
● 曲物のあるくらし
曲物は用途の幅が広く、ハレ(非日常)とケ(日常)を問わず、様々なくらしの場面で使われてきました。博多曲物の中で特徴的な製品をいくつか紹介します。
筥崎宮では、「丸三方」と呼ばれる浅い盆形の曲物に円筒形の曲物台をつけた特殊祭具が使われ、放生会(ほうじょうや)の神事では丸三方にオゴクゴと呼ばれる熟饌(じゅくせん)(高盛飯)を供えます。
他にも、10月9日に能古島の白髭(しらひげ)神社で行われる例祭「おくんち」でも、曲物が使われます。竹串に刺した柿・栗・蜜柑をそれぞれ曲物の桶に隙間なく盛り付けたモリモン(盛物)と呼ばれる大型の神饌を供えることです。
日常の用具には、炊いた飯を移し入れる飯櫃があります。中でも、カナハチ(矩八)は側板を二重にすると同時に、内胴と外胴の間の上下に中輪を入れ、内部が空洞になっているのが特徴的です。そのため、他の飯櫃に比べて通気性と保温性が極めて高くなっています。
その他に、主に寿司桶として使われるユリがあります。これは百合(ひゃくごう)分の米が入ることからユリ(百合(ゆり))と呼ばれています。寿司桶以外に、麹(こうじ)を作るモロブタ(室蓋)の機能も果たしたり、馬出の荒神(こうじん)様(火の神)を祀(まつ)る家では、5月に荒神祭と称して菱餅などの供物をユリに入れて供えていました。(石井和帆)
《謝辞》企画展開催にあたり、「博多曲物玉樹」の柴田玉樹(真理子)氏、「柴田徳商店」の柴田淑子氏および従業員の皆様には、調査や資料の御出品など多大な御協力を賜りました。厚く御礼申し上げます。