手仕事の美と技 ―博多張子―
令和2年4月28日(火)~7月12日(日)
3 博多張子の製作方法・製作道具
①型に和紙を張る
張子は型(土型・木型)に新聞紙や和紙を張り重ねて作られます。型の表面は張子を形作るため、凹凸に成形されています。また、成形した後、切込みの筋を彫り、和紙を張り、柿渋を塗ります。これは、型が水を弾くための塗装の役割を担い、型から乾燥した張子を外し易くなります。
まず、和紙を張る前に型全体に油を塗ります。そして、筋に新聞紙を2枚ほど重ねる「筋置き」を行います。こうすることで後に型出しする際に型が傷みにくく、これも外し易くする工夫の一つです。
新聞紙と和紙は直接型に張らず、事前に張り重ねる下準備をします。まず、新聞紙を水に浸けて天日に干し、生乾きの状態にします。乾燥しすぎない程度の見極めが重要です。
次に、小麦粉糊を使って新聞紙と和紙を張り重ねます。張り重ねる和紙の枚数は型の大きさによって異なりますが、2~3枚ほどです。薄いと乾燥した際に和紙が硬くならず、丈夫になりません。その後、和紙を叩いて柔らかくすることで、型に張った際に皺ができるのを防ぎます。
この下準備を終えたら、型に和紙を小麦粉糊で張っていきます。
最後に、フノリ(海藻からとった糊)を手でさすりながら全体に薄く塗りこみ、馴染ませます。
②型出し
天日で十分に乾燥させた後、切り込みの筋に包丁を入れ、ヘラを用いて型から外します。次に、切断面をあわせて膠(にかわ)(動物の皮や骨などから作られる接着剤)で張り合わせます。ただし、膠のみでは割れてしまうため、切り口に和紙を小麦粉糊で張り、上からさらにフノリを擦り込んで目張りを行います。これで張子の芯が完成します。
③胡粉掛け・彩色を施す
次に膠と胡粉(ごふん)(牡蠣の貝殻を原料の粉末)で溶いた胡粉を塗ります。胡粉は重ね掛けせずに、一度のみ行います。胡粉掛け後、乾燥が不十分だと表面が裂けてしまったり、彩色の際にムラができてしまうため、十分に乾燥させる必要があります。胡粉が完全に乾燥した時点で彩色に入ります。
絵具は擂鉢(すりばち)や擂粉木(すりこぎ)を用いて、顔料(がんりょう)(天然鉱石などからなる水に溶けない粉末)を膠で溶いて作ります。顔料は同じ種類であっても、濃い薄いといったバラつきがあります。そこで膠の量で、常用している色に調整します。また、黒色は墨を水で溶いて塗ります。
絵具を用いて、一つ一つ手描きで彩色を施し、乾燥させてから仕上げの作業に入ります。
④仕上げ
博多張子の特徴の一つである、煌(きら)びやかな金粉(きんぷん)をまぶします。糊筒(のりづつ)(柿渋を塗った和紙を重ねて硬化させた円錐形の筒)で糊を塗り、その上から金粉を撒いて接着させます。
男だるまには、目元に陰影を付けるための擦り込みを施すことがあります。擦り込みには、弁柄(べんがら)(赤色顔料の一つ)を用いますが、それだけだと色が強すぎるため、胡粉をすり潰して調節することで黒色に近づけます。そして、水や膠は使わずに、専用の刷毛(はけ)で粉末を直接擦り込みます。こうすることで目鼻立ちをくっきりさせることができます。
最後に上からニスを全体にムラなく塗り、乾燥させて完成になります。(石井和帆)