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No.495

企画展示室4

ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」登録記念 博多祇園山笠展16

平成29年6月13日(火)~8月20日(日)

(2)九州の都市博多と山笠

博多祇園山笠は、7月1日から15日まで行われる櫛田(くしだ)神社の祇園例大祭における奉納行事です。

起源については諸説あり、江戸時代に編纂された『筑前国続風土記』(貝原益軒(かいばらえきけん)著)には、『九州軍記(きゅうしゅうぐんき)』(慶長(けいちょう)12年成立)に基づいた永享(えいきょう)4(1432)年説のほか、仁治(にんじ)2(1241)年に疫病が流行した折、承天寺(じょうてんじ)の開祖である聖一国師(しょういちこくし)が施餓鬼棚(せがきだな)に乗り祈祷(きとう)水(甘露水)を撒いたという、近代に成立したとされる伝承などがあります。

博多祇園山笠は、木や竹などを用いて組みあげた素山(すやま)に、背景となる岩、館、川を据えて山笠人形を配し、能や歌舞伎などの場面を表す山笠飾りに特徴があります。毎年新造される飾りは、祭りが終了すれば惜しみなく破壊されます。勇壮かつ豪華絢爛(ごうかけいらん)な山笠は、博多と交流のある地域を中心に「ハカタウツシ」の言葉とともに伝播していきました。

写真3〕博多祇園山笠巡行図屏風

写真3〕博多祇園山笠巡行図屏風

(3)描き、写された山笠の姿

都市の賑わいを象徴する博多祇園山笠は、いつの時代も人びとを魅了する存在でした。山笠を見たり、舁いたりした人は、その時々の様子をさまざまな形で記録していました。

「博多祇園山笠巡行図屏風」(写真3)は、追い山がはじまる前年、貞享(じょうきょう)3(1686)年の山笠の姿を描いた最古の屏風です。観察してみると、10メートルをこえる高さで、舁き棒は長く、4本となっています。ゆっくりとした巡行だったようで、男衆は笑っているような、余裕のある表情をみせています。飾りの部分に目を向けると、文様入りの布地を垂らし、人形や旗などを据えるのが当時の山笠スタイルだったようです。

「追い山図絵馬」は、早良区脇山(わきやま)の横山神社に、文政(ぶんせい)13(1830)年に奉納されたものです。絵馬には、山笠のクライマックス行事「追い山」の「櫛田入り」が描かれています。人で埋め尽くされた境内は、舁く側、見る側両者の熱気に包まれています。幼子を肩に乗せる男性や塀に座り込み、「特等席」から眺める姿も確認できます。山笠に加勢にいったムラでは、往時の山笠の様子を絵馬をとおして残したのです。

『旧稀集(きゅうきしゅう)』は、博多中島町(現博多区中洲)の庄林半助(しょうばやしはんすけ)が著した江戸時代後期から幕末にかけての福岡・博多の見聞集です。半助は、文化3(1806)年の市小路(いちしょうじ)下の山笠が、『三国志』の赤壁の戦いを標題にしたもので、中央の部分に穴があいており、向こうがみえる造りで(しかも抵抗を受けず速く走れるため)珍しいと、挿絵を交えながら記しました。

『追懐松山遺事(ついかいしょうざんいじ)』は、江戸時代最後の年行司(ねんぎょうじ)(博多の町全体の取りまとめを担う役職)を務めた山崎藤四郎(やまざきとうしろう)が明治43(1910)年に執筆したものです。明治時代に様変わりした山笠や松囃子(まつばやし)の江戸時代の姿を残しておこうと、山笠の構造についても記載しています。今日まで受け継がれてきた山笠ですが、その過程には、大小の変化をともなっていたことがわかります。

写真「明治三年の一番山」は、現存する最古の山笠写真です。16メートルにもなる山笠に乗り、ポーズをとる男衆の出で立ちや表情までも読みとれます。この頃は、揃いの法被も着用されていないことがわかります(揃いの法被の着用は明治20年代頃と考えられる)。明治以降の山笠の記録は、絵や文字だけでなく写真でも残されるようになります。さらに後年には、動画も登場します。昭和初期の映像には、現在と同じ、飾り山と舁き山に分かれた山笠(明治43年の路面電車の開通以降に分離)が登場し、櫛田神社に山笠を舁き入れる様子や、山小屋に据えられた飾り山を見上げる人びとが映されています。無音ながらも躍動感あふれる「オイサッ、オイサッ」の声が聞こえてくるようです。

(河口綾香)

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休館日
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(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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